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2009-01-11

前説:東人俳句を愛す  さいばら天気

前説:東人俳句を愛す  さいばら天気


東人さんの俳句に、上田信治さんは、たった一句で、たちまちハマったらしい。それは数年前のメール句会のこと。私はその数年前から句座を共にする機会を得、じわじわとハマった。東人俳句のマニア的ファンは私の知る範囲で、この2名。実際にはもっといるのだろうが、その数はけっして多くないと思う。結社誌に句が掲載されることもないから、東人俳句をよく知るのは、句座を共にする人間に限られるのだ。

「東人さんの句は『月天』以外では読めないんですか?」

信治さんからそう訊かれたのは昨年冬。そうなんです。『月天』という俳句の集まりが1~2年に一度出している句誌以外で東人俳句を目にすることはないはず。

「週刊俳句で紹介しましょうか」と、私は咄嗟に反応した。過去の『月天』誌をめくり、さらに東人さんが参加している句会録を手に入れ、ここ3、4年の句作のなかから30句を選ばせていただいた。

東人俳句の何がおもしろいのか。それはここでは言うまい。ともかく読んでいただこう。3人目以降の東人俳句愛好家がきっと誕生すると信じている。


〔参考〕
山口東人「週末」10句 in 週刊俳句第14号 2007年7月29日 

山口東人30句テキスト

山口東人30句


耳飾り外して笑ふお金持ち
路肩からのぞむ梅が枝すこし泣く
春の山太田トラなる仲居ゐて
カーテンのはさまつてゐる扉かな
語り部の眼鏡の横のパセリかな
技術者が蝉とりにゆく若狭湾
夏の風邪普通の熱でないやうな
うな丼の器が無地の杉並区
散歩者が網戸のそばを通りけり
絶望の九回裏の西瓜かな
橋梁に嫌ひな虫が這つてゐる
ヘルパーさん野菊のやうな文字を書き
消火器を倒さうとする子猫かな
女子といふことばはすでに秋めいて
つまづいて笑ふ大人や茸山
電車過ぐ桃一列を買ふ夜かな
星が流れて帽子屋に問題児
白衣着て秋の棚田を見下ろせり
カンナ咲く便利な伊藤仏具店
無月だとヒゲタ醤油のはうがいい
ブリキ屋に双子の生まれ霜柱
肌寒やセーラー服を吊るす家
すゞ虫やテレビの男茶漬け食ふ
馬喰横山見知らぬ国の毛皮吊る
感冒や惑星までの距離を訊く
白鳥を見る将軍の臀部かな
原発を借景にして毛糸編む
鮟鱇と万年筆で書きにけり
蒲団屋の命の果てのやうな柄
加湿器を平和島まで運ぶ人