2007-08-05

第1回 週刊俳句賞 対馬康子 選と選評

対馬康子  選と選評


 ※作者名は選評をいただいたのち編集部で付記いたしました(読者の便宜を考慮)。


08 夏痩(佐藤文香) 3点

夏の蝶自画像の目はひらいてゐる
箱庭に朝日の差してゐるところ
露台てふうちのそとがはにて待てり
掬はるる前夜の金魚なり黒し

部屋の隅に置かれた小さな箱庭にも等しく朝が訪れる。軒先に置かれた露台にて人を待つ夕暮。売れ残っている黒い色の金魚。時間軸を遡るときに混ざり合う、諦観と希望のような感覚に共感した。

24 焼け残る(村上瑪論) 2点

鉱石の綿にくるまる涼しさよ
あをぞらの真下に瓜の冷えてをり
蠍座の尾の焼け残る晩夏かな

標本箱に並ぶとりどりの鉱石を包む綿の白さ。晴れ上がった夏空の下冷たい水に冷された瓜。精神にゆがみのない抒情性で表現された世界が秀逸である。

35 シャツ汚す(小池康生) 1点

螢狩鉄路のうへを歩みけり
四万六千日東京タワーにも寄りて
点すまでぶつきら棒な花火なり

四万六千日のお参りのあと東京タワーにも寄って帰るという「今時」な感覚、火が点くまでは変哲もないとみる花火など、ドライな若さが面白い。

他に共鳴句

01 ひるがほを引けばあらくさ倒れけり
04 赤く堅くけはしき土や枇杷育つ
10 掌をかへせば裏へかたつむり
14 足の指ひろげて洗ふ日焼の子
19 いつのまにひとりふへてる水遊び
20 小さきもの買ふためにある夜店かな
26 虫干の虫の行き場を風渡る
32 匙に顔まるく映れる帰省かな