2007-11-11

わかば・私は翼の弟子である 佐藤文香

わかば・私は翼の弟子である ……佐藤文香



北大路翼は私の師匠だ。好きな人間のうちの一人だ。

北大路翼の第一印象は最悪だった。まだ私が何も知らない高校生の頃、ネット上の俳句掲示板に、彼はいた。作る俳句もエロだったし、普通の俳句に対するコメントもエロだった。はっきり言ってこんな人と句座を共にするのは身が穢れると思ったし、先輩である神野紗希に、「あの人はどうにかならないのか」と相談したことさえある。

今、その北大路翼は私の師匠だ。彼は頭がいいのだ。

しかし彼に何人女がいるか、把握したことはない。毎日どれだけ酒を飲むかも知れない。キャバクラになぜ金を使えるのか。しかもキャバクラの女に金を借りて返さない。
「ガストへ行こう」と言うのでおごってくれると思ったら、帰り際に「金がないんだよ」と言ってワリカン。「金がないからおごってくれ」と言われ、ウェンディーズでスープをおごる。金がないからたばこはもちろん「わかば」。そのくせ人の煙草を必ず1本は吸う。

それでも、北大路翼は私の師匠だ。彼は優しい。

もともと、彼が「師の真似をするな」と言ったので、すぐさま入門した。師匠のコピーばかりの俳句の世界において、この信条は画期的なものだと思ったからだ。「弟子には手を出さない」とも言った。「弟子以外にはみんな手出さなきゃいけないからそっちの方が大変だ」とも。だから私は北大路翼に、おっぱいもお尻も触られたことはない、そしてそれは私の誇りでもある。

そんな北大路翼が、今まだ私の師匠だ。

最近、いろんな意味で、師匠の道をたどりつつある。これでは師の教えに反する!マジメな佐藤文香に戻るか、それとも北大路翼を離れるか、北大路翼がマジメになるか・・・。

(結局俳句のこと、書かなかったですね。でも、彼と会うと、必ずしっかり俳句の話をします。こちらは、師弟間の秘密です。)



1 comments:

匿名 さんのコメント...

なあるほど。