2007-12-02

第32号 2007-12-2 10句作品 テキスト

 浜いぶき   冬の匂ひ


枕木にわづかなくびれある霜夜

冬萌や米軍基地は囲はれて

帰り花バス降りてゆくひとの老い

暖房や私用電話のひつそりと

枯葉つもりて水のなきプールかな

国道に冬の匂ひのしてをりぬ

ふかぶかと白菜切らる両肩に

星しげし湯豆腐の湯の澄んでをり

アイロンに水足しにけり冬うらら

山眠るけものの目尻濡れてをり




 小池康生   起伏


しぐるゝや川面近くに別の風

標識の傾いてゐる帰り花

ひと滑りして渦を巻く落葉かな

引き裂けど落葉は銀杏なるかたち

凩や割箸ぎゆつと圧し込まれ

牡蠣の身に冷たき海の運ばるる

斯くなるもボディコンシャス冬帽子

バス停にマフラー堅く括らるる

石跳びぬ蹴るともなしに冬日向

大枯野起伏を凝らすことしきり




 田島健一  白鳥定食


海鼠腸や人は星雲ぞとおもう

鏡中のこがらし妻のなかを雲

白菜が祖母抱きしめて透きとおる

花屋の花はどれもてのひら冬青空

箱買いの蜜柑の隙間ねがいごと

子の言葉殖ゆ綿虫の一大事

顛末の朝のしずけさ寒卵

壺を置く婚前の狩いまはじまる

白鳥定食いつまでも聲かがやくよ

たましいの静かな試食十二月

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