林田紀音夫全句集拾読 野口 裕
001
村木佐紀夫遺句集は、まだ先だろう。しばらくの時間つぶしには大きすぎるが、ぼちぼちと読んでいこう。
狛犬にそびらの虚空のぞかるる
無季の句としては、一番最初に出てくる。個人的にはもう一つ。
歳月や傘の雫にとりまかる
こちらの方が好み。
薄咳のあとの蝗が見当らぬ
わずかの時間差。
道ばたの何する火かと訊ね得ず
時代背景(昭和22~24年)を考慮に入れると、隣組崩壊後の個人の心象をよく表しているように思う。かつては気軽にたずねることができた。今は個々が生きるのに必死だ。火は懐かしい思いをかき立ててくれるが、たずねても何も返ってこないだろう。
現代はたずねること自体が成立しにくいだろう。句の中で無理にたずねると、擬似村落共同体を呼び寄せる。
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2008-01-13
林田紀音夫全句集拾読001 野口 裕
Posted by wh at 0:45
Labels: 野口裕, 林田紀音夫, 林田紀音夫全句集拾読
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