林田紀音夫全句集拾読 086
野口 裕
絨毯に日が射す土曜早く来て
平成五年、「花曜」発表句。週休二日制の移行期に書かれたこの句、絨毯は朝の居間の象徴か。早くも訪れた休日に時間の早さを実感している。
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眼帯の中の寂しい鳥を飼う
平成五年、「花曜」発表句。「淋しい」ではない。紀音夫なりの悟達と読める。
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雨撥ねて枕木黄泉の国へ行く
平成五年、「花曜」発表句。枕木が黄泉の国へ行くのか、枕木を見つめる作者が行くのか、多分後者だろう。古い枕木はガーデニング用に売られている。そこから取材したか。枕→眠り→死の連想が直接の発端だろうが、雨をはじくほど枕木には油脂分が残されている。そこが老境の作者との対比になる。
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都市灯る躓く階段ばかり殖え
平成五年、「花曜」発表句。「うどんの箸」の系譜に連なる句。他人の空似程度に、ヒッチコックの「めまい」を連想する。
桜ほころびて鬼籍の人通る
平成五年、「花曜」発表句。緊張がゆるむと、回想が過去に向かう。
頭から濡れて三叉路酸性雨
平成五年、「花曜」発表句。ブロンズ像に、幾筋も酸性雨による腐食を見かけることがよくある。句はもちろん人間が酸性雨をかぶったと考えて差し支えない。
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2009-09-27
林田紀音夫全句集拾読 086 野口裕
Posted by wh at 0:05
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