林田紀音夫全句集拾読 092
野口 裕
薄明の身を苛んで震禍の揺れ
地割れ大きな薄暮被災の顔いくつ
平成八年、「花曜」発表句。同年の海程発表句から似たものを拾い出すと、
薄明の身を苛んで余震の揺れ
地割れ大きな未明の被災の顔いくつ
次の句はまったく同じ句形で両誌に発表している。
午後になる炊き出しの湯気ひとの息
「花曜」発表分には、その前に
炊き出しの昼来て逃げ場ない煙
後に、
体感余震火と水を使うとき
水の来ている午前体感余震の辻
の二句がある。「水の来ている」は、水の配給車のことを指していると思われる。そして、いかにも紀音夫と思わせる、
体感余震たびたび死者の翳を踏み
が続く。
地震関連かどうか判定の微妙な句もあるので、確かな数は確定できないが、ざっと数えて海程が十八句、花曜が四十句ある。内容も、花曜発表分の方が濃厚である。発表年を一年待ったのと同じく、意志的な選択だったのだろう。
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2009-11-15
林田紀音夫全句集拾読 092 野口裕
Posted by wh at 0:05
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