2009-12-13

〔週俳11月の俳句を読む〕杉山久子 「あれこれ」

〔週俳11月の俳句を読む〕
杉山久子
「あれこれ」


母を出でゆく赤きあれこれ雪降りぬ   櫂未知子

「あれこれ」という大雑把な表現に、母から流れ出てゆく肉体的、精神的なものが重層的に提示される。
赤は命の根源にかかわるものを表しているだろう。白く静かな背景は淡々とすすむ時間。冷静に慟哭する作者の眼差しに打たれる。

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師走には少し間のある串団子    池田澄子
  
十一月をこんな風に捉えると、普通の流れとは違うもうひとつの時間の流れに行き当たったようで、なんだか得した気分。
串団子の重すぎず軽すぎないのほほんとした存在感がいい。

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上野には象を残して神の旅     西村麒麟

神様はそれぞれ動物やなにかを出雲へ同伴するのだろうか。どういう基準で選別するのか。地名と動物の組み合わせで色々出来そうだが(やってみたら楽しかった)上野に残す象にはほどよい懐かしさと切なさが感じられる。

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凍鶴のわりにぐらぐら動きよる   西村麒麟

微動だにしないくらいである筈の凍鶴への突っ込みが笑える。そもそもそれって凍鶴とは言わないんじゃ?と突っ込みたくもなるが、まあそれは置いとい て・・・。口語で言い放って嫌味がないが、「わりと」の緩さが更に句を面白くしている。次句「滅ばざるもののひとつや鶴の足」への連なりも、ぐらぐらしな がらぬけぬけと生き延びるのだろうと思わせてくれる。

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小春日を隠居おもうてぬりかべは   太田うさぎ
柚子一滴目玉をやぢの湯の溢れ     〃

遊び心が楽しい一連の句の中で、季語がそっと寄り添っている句に惹かれた。
ぬりかべにそんな思いがあったとは。小春日がやさしく包む。
目玉おやじは冬至湯としゃれこんだのか?あのかん高い声で大慌てしているおやじの姿が目に浮かぶ。


角谷昌子 祗園町家 10句  ≫読む
月野ぽぽな  秋 天 10句  ≫読む
小川春休  三 歳 10句  ≫読む
櫂 未知子 あを 10句  ≫読む
池田澄子 風邪かしら 10句  ≫読む
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豊里友行 戦争 10句  ≫読む
大井さち子 かへる場所 10句  ≫読む
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