【週俳5月の俳句を読む】
父には父の、母には母の ……岡本飛び地
花は葉に枕は果てしなく沈む 渋川京子
冬は鼻炎で鼻がつまりやすく、春は花粉症で鼻がつまりやすい。寝ている間に息苦しくなる時がある。そこで枕を頭の下でなく首の下に起き、気道を確保して眠るようにしている。花が葉になる頃には花粉症も落ち着き、頭の下に枕を置いて眠れる。久しぶりに頭の下に置いた枕はそれはもう柔らかく感じられる。それこそ頭が枕に沈んでいくように。
毎晩、寝る前にこの句を思い出しています。
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母と行き父と戻りし遠花火 西澤みず季
一読して、複雑な家庭事情を背景にした切ない物語のように読めた。けれど必ずしもそうではないことに気付いた。
一昨年の夏、実家に帰った時がちょうど夏祭で、花火が上がった。祭には母と行き、父と戻った。父は地元の観光施設で働いていた都合で運営側にいた。母は人ごみが嫌いだったが、たまたまその年は祭に行き、知り合いに会って話に花を咲かせていた。
仕事、友人、家族、ご近所、同級生、水利組合。父には父の、母には母の付き合いがあり、地元の人がみんな集まる祭ではそれらが交錯する。
だから必ずしもこの句は切ない物語ではない。田舎に住む何でもない家族、例えば岡本家の物語かもしれない。
■柴田千晶 ダブルベッド 10句 ≫読む
■西澤みず季 遠花火 10句 ≫ 読む
■榎本 享 緑 雨 10句 ≫読む
■渡辺誠一郎 二輪草 10句 ≫ 読む
■渋川京子 遠きてのひら 10句 ≫読む
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2010-06-06
【週俳5月の俳句を読む】岡本飛び地
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