2010-10-03

林田紀音夫全句集拾読135 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
135




野口 裕



ギプスの白の遠い野より担送車

昭和四十七年、未発表句。「骨折」と前書。続けて、

白いベッドのつづき無音の河床見え

繃帯のつづきの鈴に妻が来る


とあるので、骨折、そして入院を余儀なくされたのだろう。これにより、第二句集巻末の一連の句、

脛骨に罅その日から浮遊する

太陽へ数歩近づく車椅子


繃帯のおびただしさを蜂歩く


繃帯を巻つぎ山河淡くする


義肢伴なえば油槽車に極まる黒


骨の音加えメロンの匙をとる


足萎えの暦日芝生傾いて


凶年を終る声あげ転倒し


足萎えていよいよひびく掛時計


の事情がはっきりする。入院中と考えられる句からは、普段の日常からは考えられない穏やかな時間が読み取れる。それさえも紀音夫にとって、戦後の歴史認識をいよいよ苦くさせる作用があったようだ。

 

体操の白が咲き日はさわさわ降る

昭和四十七年、未発表句。紀音夫の世界から遠いので、発表に至らなかったのだろう。句それ自体からは、鮮明な印象を受ける。

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