林田紀音夫全句集拾読 135
野口 裕
ギプスの白の遠い野より担送車
昭和四十七年、未発表句。「骨折」と前書。続けて、
白いベッドのつづき無音の河床見え
繃帯のつづきの鈴に妻が来る
とあるので、骨折、そして入院を余儀なくされたのだろう。これにより、第二句集巻末の一連の句、
脛骨に罅その日から浮遊する
太陽へ数歩近づく車椅子
繃帯のおびただしさを蜂歩く
繃帯を巻つぎ山河淡くする
義肢伴なえば油槽車に極まる黒
骨の音加えメロンの匙をとる
足萎えの暦日芝生傾いて
凶年を終る声あげ転倒し
足萎えていよいよひびく掛時計
の事情がはっきりする。入院中と考えられる句からは、普段の日常からは考えられない穏やかな時間が読み取れる。それさえも紀音夫にとって、戦後の歴史認識をいよいよ苦くさせる作用があったようだ。
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体操の白が咲き日はさわさわ降る
昭和四十七年、未発表句。紀音夫の世界から遠いので、発表に至らなかったのだろう。句それ自体からは、鮮明な印象を受ける。
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2010-10-03
林田紀音夫全句集拾読135 野口裕
Posted by wh at 0:05
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