2010-10-31

後記+プロフィール184

後記 ● 上田信治

今年も「落選展」をお送りします。

去年の「落選展」の号の後記で「来年は、皆様のどなたかが、角川俳句賞を受賞されるかもしれません」と書いたのですが、まさか、身内から受賞者が出るとは。

優夢さん、ほんとうにおめでとうございます。



今年の角川俳句賞は、やや「荒れ気味」だったでしょうか。

選考会終盤、正木ゆう子さんが◎をつけた「春雷」と、池田澄子さんの◎「投函」が残りましたが、決め手がない。正木さん池田さんが、それぞれ対手の推す作品について、池田「はったりだけで空疎」「完成度がむなしく感じます」正木(いくつかの句を挙げて)×ではないけれど、そのレベル以下の句が多すぎ」と譲られない。授賞作無しか、同時授賞かを話し合って、出さないよりは出した方がいいということで決まった……と、言ったら、受賞のお二人に気の毒ですが。

もっとも、角川俳句賞、以前は複数授賞があたりまえ、意見が割れたら両方に出してしまうことが多かった(≫データ ≫ウィキ)。

賞創設以来これまで、もっとも成果を残した受賞者といえば、田中裕明(第28回 昭和57年)で異論はないでしょうが、このときも複数授賞で、しかもすんなり決まったわけではなかったらしい。

関悦史さんの文章から、この時の経過を引くと、

選考委員は飯田龍太・桂信子・岸田稚魚・清崎敏郎・角川春樹。田中裕明の他に、作風の違う稲富義明が農村生活を描いた一連で同時受賞している。

どちらも特別強く支持した選考委員がいたわけではなく、討議の末、飯田龍太が田中裕明を1位、桂信子が2位に推し、清崎敏郎と角川春樹が稲富義明を推して、 3、4篇が団子状態であった中から上位2人を同時受賞としたようだ(ちなみにこの回の予選通過者には菅原鬨也、三村純也、黛執、長谷川櫂、辻桃子、大石悦子といった名も見られる)。(閑中俳句日記(27)「田中裕明「童子の夢」50句」豈weekly2010年3月21日号)

つまり、意見が割れても、決め手がなくても、作家はそこに「いた」わけです。

惜しくも一次予選を通過しなかった作品も含めて、今年も、角川賞応募作800余編のかたまりの中に、むこう十年か二十年の俳句の可能性のいくばくか(かなりの部分?)があることは、間違いない。

選考委員の方も何度も言われてますが「50句そろえるのはたいへんなこと」。「落選展」には、有意の作家が「たいへん」な思いをした結果の、勝負句が出展されているはずです。もちろん、失敗作やトンデモ句もあるかもしれませんが、それは読者の皆様からご指摘いただければ、有意義なはず。

読者各位におかれましては、ぜひ、ご意見ご感想という形で「落選展2010」にご参加下さい(作品のテキスト版の、コメント欄へ、お書き込み下さい)。



では、また、次の日曜日にお会いしましょう。



no.184/2010-10-31 profile

落選展2010

■五十嵐義知 いがらし・よしとも
1975年秋田県生まれ。平成13年、「天為」入会。平成21年、「天為」同人。
共著に『新撰21』(邑書林、平成21年12月)。

■生駒大祐 いこま・だいすけ
1987年三重県生まれ。「東大学生俳句会」「トーキョーハイクライターズクラブ」等で活動。

■尾上恵子 おがみ・けいこ
1955年 徳島県生れ。2005年「街」入会、2007年「街」同人。

■小池康生 こいけ・やすお
大阪出身大阪在住。「銀化」新人賞受賞。「銀化」同人。俳人協会会員。

■佐藤文香 さとう・あやか
1985年生まれ。「ハイクマシーン」「里」所属。第二回芝不器男俳句新人賞対馬康子審査員奨励賞受賞。2008年、句集『海藻標本』上梓。同書により、『雪梁舎』俳句まつり・宗左近俳句大賞受賞。期間限定短詩系女子ユニット「guca」やってます。

■しなだしん しなだ・しん
1962年、新潟県柏崎市生まれ。東京都新宿区在住。
1997年「青山」入会。1999年「青山」同人、俳人協会会員。2002年「田」創立に編集人として参加。2006年まで同編集長。
2008年、第一句集『夜明』(ふらんす堂)刊行。2010年『俳句研究』第6回30句競作入選。「青山」「田」「OPUS」所属。
ブログ「スケッチブッ句」

■杉原祐之 すぎはら・ゆうし
昭和54年生、大学入学時に先輩に拉致監禁され俳句を始める。
「山茶花」飛天集同人、「夏潮」運営委員。
平成22年4月に句集『先つぽへ』を刊行。
趣味は旅行。最近ジムとサイクルロードレースにはまる。

■すずきみのる すずき・みのる
1955年生まれ。京都市在住。俳人協会会員。
「参」「鼎座」所属。句集『遊歩』。「俳句ホームページ参」

■関悦史 せき・えつし
1969年、茨城生まれ。

第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、第11回
俳句界評論賞受賞。「豈」同人。共著『新撰21』(邑書林)。
URL:http://etushinoheya.web.fc2.com/(管理人は別人)
URL:http://kanchu-haiku.typepad.jp/blog/(句集紹介用ブログ)


■中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。

■中塚健太 なかつか・けんた
1962年兵庫県生まれ。東京都在住。2005年「銀化俳句会」入会。2010年同会新人賞。同会同人。

■林 阿愚林 はやし・あぐりん
1950年大阪生まれ 千葉県在住 「華」同人を経て現在無所属 津田沼研究句会メンバー

■福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。開成高校在学中に俳句部に入り、句作をはじめる。現在大学生。

■前北かおる まえきた・かおる
昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創
刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。

■山下つばさ やました・つばさ
1977年鹿児島生まれ。神奈川育ち。東京在住。
「街」、「海程」所属。

■山田露結 やまだ・ろけつ
1967年生まれ、愛知県在住、「銀化」同人
ホームページ「山田露結の頭の中」



■神野紗希 こうの・さき
1983年6月4日、愛媛県松山市生。句集に『星の地図』。お茶の水女子大学博士課程在籍。

■野口る理 のぐち・るり
1986年生まれ。大学院生。


■野口 裕 の ぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)は4月10日に第四号を発行。入手希望の方は、yutakanoguti@mail.goo.ne.jp  ま で。進呈します。 サイト「野口家のホーム ページ」


■俳句飯 はいくめし 
鳥取県出身鳥取在住。リアルな俳句活動はしておりません。本年度より、作句をはじめました。『週間俳句』投句歴:1回(175号)

■高橋透水 たかはし・とうすい
1947年3月新潟生まれ。東京都在住。還暦後に俳句を始める。
超結社の句会『湯島句会』に所属。他に俳誌やインターネット句会に投句している。

さいばら天気 さいばら・てんき1955年兵庫県生まれ。1997年「月天」句会で俳句を始める。1998~2007年「麦」在籍。現在「豆の木」会員。現代俳句協会会員。2003年「麦」新人賞、05年、06年「豆の木賞」受賞。ブログ「俳句的日常」「七曜堂」 twitter

■上田信治 うえだ・しんじ 
1961年生れ。「ハイクマシーン」「里」「豆の木」で俳句活動。ブログ「胃のかたち」



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