〔週俳7月の俳句を読む〕
あっというまに
今井肖子
潮騒の影生まれたる葭簀かな 堀本裕樹
音楽を追ふごとく虹消えゆけり
いずれの句も、視覚と聴覚が響き合っている。一句目は、潮騒の、で切れているのだが、色濃い葭簀の影に波音が重なり合って、音と風景が同時に立ち上がる。二句目は、音楽を追ふ、という感覚的表現が軽やかであり、明るく濡れた空を見上げるうち虹はすぐに消えてしまう。
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断崖に木槿落ちてはまた開く 橋本 薫
さまざまな赤、紅、が、水と絡み合いながら詠まれている十句は、この色の持つもの悲しさを感じさせる。この句、私の中で海と木槿はあまり結びつかずシュールな絵が浮かぶが、断崖に木槿の木があればその花は海へ落ちるだろう。日々咲いては落ちる木槿は底紅か、紅を包む白は海へ沈み、さらに深い藍色に包まれてゆく。
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来たるべき世紀のすでに来て嚔 西原天気
小学生の頃、二十一世紀という言葉の持つイメージは、まことに激しく未来だった。鉄腕アトムは2003年生まれという設定で、そっと数えてみたらその年には自分は四十九歳、うへ~と得も言われぬ気分になった覚えがある。未来はあっというまに現在になり過去になる。ひとつ嚔をしたらすべてが消えてしまう、そんなことが不思議ではないような気もしてくる。
第219号 2011年7月3日
■室田洋子 青桐 10句 ≫読む
■堀田季何 Waiting for… 10句 ≫読む
第221号 2011年7月17日
■大野道夫 明日へと我も 10句 ≫読む
■橋本 薫 人魚姫の花壇 10句 ≫読む
第222号 2011年7月24日
■三吉みどり 琉 金 10句 ≫読む
第223号 2011年7月31日
■堀本裕樹 浮 言 10句 ≫読む
ウラハイ
■西原天気 原子力 10句 ≫読む
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2011-08-14
〔週俳7月の俳句を読む〕今井肖子
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