〔週俳7月の俳句を読む〕
走り続ける男
茅根知子
風孕み郵便夫ゆく草いきれ 三吉みどり
赤い自転車が一直線に走りぬけてゆく。郵便夫は、見ず知らずの人のために懸命にペダルを漕ぐ。只管に走る生業を恨むこともなく、男は一生走り続ける。〈草いきれ〉の斡旋が絶妙で、走り続ける男の物語を思い浮かべた。
うたたねのねがへり打てば蠅も来る
昨今では蠅を見る機会も少なくなったが、ある時代にはこんな風景があった。開け放った広間にごろんとしていると、蠅が飛んできた。団扇で払うものの、離れることはない。蝉が一斉に鳴きだし、三角に切った西瓜が運ばれてくる。普通の幸せがあった日常を、リアルに表現している。
その他、〈汗かきし肘にくつつくノートかな〉〈改札にあつまる登山靴の泥〉の臨場感に惹かれた。
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教会の床に草矢の落ちてをり 堀本裕樹
ともすれば見落としてしまうような、何でもない出来事。奇を衒うことなく、外連味のない作りに惹かれた。作者の作句に対する姿勢の美しさが窺われる。草矢を落とした誰かが、確実にそこにいた。その時間と磨きぬかれた床が目に浮かんでくる。
その他、〈音楽を追ふごとく虹消えゆけり〉〈月へ撃つ水鉄砲の水の綺羅〉の清楚な作りは作者ならではのものと思う。
第219号 2011年7月3日
■室田洋子 青桐 10句 ≫読む
■堀田季何 Waiting for… 10句 ≫読む
第221号 2011年7月17日
■大野道夫 明日へと我も 10句 ≫読む
■橋本 薫 人魚姫の花壇 10句 ≫読む
第222号 2011年7月24日
■三吉みどり 琉 金 10句 ≫読む
第223号 2011年7月31日
■堀本裕樹 浮 言 10句 ≫読む
ウラハイ
■西原天気 原子力 10句 ≫読む
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2011-08-14
〔週俳7月の俳句を読む〕茅根知子
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