〔週俳11月の俳句を読む〕
移動と残像
河野けいこ
絨毯を矢印果てるところまで 菊池麻美
先日「国会議事堂見学コース」なるものに参加した(衆議院)。
持ち物検査所を通過すると、一団となってぞろぞろと矢印の通りに大移動となる。元はきれいな絨毯だったろうが、赤い絨毯は中央が汚れて擦り切れて我々を待っていた。警備の職員があちこちに配置され、ふらふらと少しの逸脱も許されないコースである。
迷路のような議事堂の中を、興奮した声が矢印にそって移動していく。
写真を撮ることも許されないので、移動するしかないのである。
順路を終えて外にでると、必ず皆振り返って、あの三角部分を確認するそうだ。
絨毯を敷くような場所には、そういえば矢印順路が多いような気がする。
絨毯も人を誘導する道具なのだろうか。
鈴付きのねこ透きとほる冬の雨 山下彩乃
お孫さんの句などは「はい、そうでございますか」と素通りしてしまいそうになるが、猫の句は素通りできないのである。
それは猫好きだから、ついこの猫はどんな猫かしら・・となってしまう。
「鈴付きのねこ」は生きている猫なのか、窓辺の置物の猫なのか・・・
さっきまでいた猫がチリリとした音を残して去って行った。
透きとほるは、そんな猫の残像を表現したのではないだろうか。
外は静かな冬の雨である。
そんな風に思ってしまった。
透きとほるを読み手にまかせる句だから、
この句の前になおさら長く立ち止まってしまうのである。
■笹木くろえ 流星嵐 10句 ≫読む
■豊里友行 祖母眠る 10句 ≫読む
■菊池麻美 神去月 10句 ≫読む
■山下彩乃 野 蛮 10句 ≫読む
■田中朋子 ビル風10句 ≫読む
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2011-12-11
〔週俳11月の俳句を読む〕河野けいこ
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