【週俳9月の俳句を読む】
すっぴんの街
茅根知子
「夏あざみ」十句を読んでいくと、海外詠であることがわかる。俳句の楽しみ方として、一句の心情を感じるものと、作品群の中に漂う匂いを感じる読み方がある。
「夏あざみ」は後者の読み方として、楽しませてくれる。
空港に象の石像夏盛ん 小田涼子
異国の空港へ降り立ったとき、その匂いから旅が始まる。見回せば、違う顔、骨格、そして、違う文字や言葉が、目に耳に飛び込んでくる。ワクワクの始まり。〈夏盛ん〉が、その期待をさらに高めてくれる。
トゥクトゥクで街へ出掛ける夏の夜
そして、期待は頂点へ。ドキドキ感いっぱいの異国の夜。トゥクトゥクの揺れも街の喧騒も、睡魔を通り越した覚醒さえ、どれもが楽しい時間。
汗ばみて異国のナイトマーケット
いつもなら不愉快な暑さと湿度だが、旅先ならそれも楽しい。すっぴんで汗かいて、異国の体臭を感じながら歩くマーケット。〈異国のナイトマーケット〉という措辞が、読み手を毒々しいほどの煌びやかな夜へ誘い込む。
「夏あざみ」は十句の中に序破急を作り、読み手を楽しませてくれる。行ったことのない異国に、少し足を踏み入れた気分になった。
■るふらんくん 地層 10句 ≫読む
■井口吾郎 沢庵自慢 10句 ≫読む
第281号 2012年9月9日
■柏柳明子 流れ星 10句 ≫読む
■小田涼子 夏あざみ 10句 ≫読む
第282号 2012年9月16日
■対中いずみ 膝小僧 10句 ≫読む
■杉原祐之 ムースニー 10句 ≫読む
■酒井俊祐 綺麗な黄色 10句 ≫読む
第283号 2012年9月23日
■山口昭男 靴墨 10句 ≫読む
■金子 敦 月を待つ 10句 ≫読む
■後閑達雄 猫じやらし 10句 ≫読む
第284号 2012年9月30日
■桑原三郎 すこし風 10句 ≫読む
■西山ゆりこ 手紙 10句 ≫読む
■谷 雄介 最近考えた事 10句 ≫読む
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