2012-10-14

【週俳9月の俳句を読む】すっぴんの街 茅根知子

【週俳9月の俳句を読む】
すっぴんの街
 

茅根知子


「夏あざみ」十句を読んでいくと、海外詠であることがわかる。俳句の楽しみ方として、一句の心情を感じるものと、作品群の中に漂う匂いを感じる読み方がある。
「夏あざみ」は後者の読み方として、楽しませてくれる。

空港に象の石像夏盛ん   小田涼子

異国の空港へ降り立ったとき、その匂いから旅が始まる。見回せば、違う顔、骨格、そして、違う文字や言葉が、目に耳に飛び込んでくる。ワクワクの始まり。〈夏盛ん〉が、その期待をさらに高めてくれる。

トゥクトゥクで街へ出掛ける夏の夜

そして、期待は頂点へ。ドキドキ感いっぱいの異国の夜。トゥクトゥクの揺れも街の喧騒も、睡魔を通り越した覚醒さえ、どれもが楽しい時間。

汗ばみて異国のナイトマーケット

いつもなら不愉快な暑さと湿度だが、旅先ならそれも楽しい。すっぴんで汗かいて、異国の体臭を感じながら歩くマーケット。〈異国のナイトマーケット〉という措辞が、読み手を毒々しいほどの煌びやかな夜へ誘い込む。

「夏あざみ」は十句の中に序破急を作り、読み手を楽しませてくれる。行ったことのない異国に、少し足を踏み入れた気分になった。


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