2012-12-02

林田紀音夫全句集拾読242 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
242

野口 裕





細りゆく身を月光をまといつつ

昭和六十一年、未発表句。五七五に、作者名という情報を付け加えて鑑賞するか、外して鑑賞するかは、常に悩ましい問題である。だが、こうした句ではどうしても紀音夫という名を脳裏に浮かべてしまう。老境の自画像。

 

暖かい日が硝子戸のはるかより

風呂敷につつむ華燭の思い出も

振り返る歳月障子閉ざされて


昭和六十一年、未発表句。連句なら、元に戻っていると、突き返されそうな三句の運びだが、硝子戸から差し込む陽気に誘われて思い出したありし日が、強烈に作者の感興を呼び覚ましたのだろう。風呂敷は、紀音夫愛用の語のひとつ。

この頃、スーパーマーケットで買い物をすると、ポリ袋の費用を取るところが増えてきた。そんなこともあり、当方も風呂敷を常時携帯するようになった。昭和末年頃には、なじみの薄くなっていた風呂敷だが、また身近な場面で登場することも多くなるだろう。

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