2013-07-21

【週俳6月の俳句を読む】ラジオからは 西丘伊吹

【週俳6月の俳句を読む】
ラジオからは

西丘伊吹


隅つこが好きな金魚と暮らしけり  飯田冬眞

昼休み、5、6人でランチに行くことになると、店に入るあたりで席順が気になってしまう。なるべく最後尾につき、端の席に座ろうとするのだけれど、「わたし、お手洗いに行くから」などと言われて真ん中の席になってしまったときの戸惑い。うちには今テレビがないから、話題の朝の連続ドラマも観ていないし、きのう読んでいたのは皆に話すには地味な本だし、最近うれしかったのは薄紫のすごくきれいなトルコキキョウを買ったことで、最近びっくりしたのはそのトルコキキョウの花びらに毛虫がひそんでいて、朝起きたらそれがぴったり茎にはりついていたこと。……なんていう話を、だれか面白がって聞いてくれるとは思えなくて、真ん中の席で困惑してしまう。それなら端の席で、皆の華やかな話を聞いていたいと思う。

家に帰ってラジオをつける。出窓にアクリルのケースを金魚鉢代わりにしたものをおいていて、そこに金魚が一匹、泳いでいる。泳いでいるといっても、隅っこが好きらしくて、大抵、角の部分に顔をあててひとところにいる。トルコキキョウは、意外と萎れるのが早いなと思う。テーブルの上に散っている花粉。金魚に餌をあげたら、お風呂を沸かそうかな。ラジオからは、知らない日本語のロックが流れている。

第319号2013年6月2日
閒村俊一 しろはちす 10句  ≫読む

第320号 2013年6月9日
石井薔子 ワッフル売 10句  ≫読む

第321号 2013年6月16日
秦 夕美 夢のゆめ 10句 ≫読む

第322号 2013年6月23日
永末恵子 するすると 10句 ≫読む

第323号 2013年6月30日
飯田冬眞 外角低め 10句 ≫読む

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