2014-02-09

SUGAR&SALT 12  山に金太郎野に金次郎予は昼寝 三橋敏雄 佐藤文香

SUGAR&SALT 12 
山に金太郎野に金次郎予は昼寝 三橋敏雄

佐藤文香

「里」2011年3月号より転載

インターネットというのはこわいもので、消さない・消されないかぎり文章が残っている。

昨日、早稲田大学俳句研究会の掲示板、というのを見つけた。

66 ■[重要] 【保存版】予定表 ァャヵさんの書込み 2006/04/15(土) 01:26:19
☆4月☆
19日(水)18:30~定例句会(5句投句)
21日(金)18:30~ゼミナール「三橋敏雄」(担当:佐藤)     (以下省略)

大学3年生になり、早大俳研の幹事となった頃の書き込みの一部。

そういえば、と、大量のコピーの束を発掘した。

上記「ゼミナール」の担当者として、大学の図書館に籠ってひたすらコピーした、「俳句研究」の三橋敏雄特集や角川「俳句」の三橋敏雄追悼特集。そのとき自分が作った「三橋敏雄略年譜」「三橋敏雄百句」ほか、資料だ。

イエローのラインマーカーがずいぶん引いてある。全然、覚えていない。「ロマンチシズム」を大きく丸で囲んである。覚えていない。早稲田からは私と谷雄介、竹岡佐緒理。他大から野口る理、山口優夢、そして大学入学後間もない藤田哲史も参加したようだ。

このあと、西東三鬼も私が担当し、三鬼は一応全句読んだが、敏雄は読めなかった。私が作った「三橋敏雄百句」は、自選句や、誰かの選句したものから引っ張ってきて、百句に仕立てたものだった。読めなかった。自分にがっかりしていた。

そのときひとつだけ、しっかり印象に残った言葉が、「厳正独立の一句」。

池田澄子の文章で読んだことがあったからだろう。この言葉は「使える」と感じた覚えがある。実際、無知で何も考えていない自分の一句を、「俳人」と呼ばれる人々の作品と同じ土俵にのせるための、チグハグな演説に使った気がする。若さの饒舌は恥だ。今も、か。

俳句は一たび作者の手を離れてのちは、そこに使われた言葉の意味と韻律から触発される映像表現に一切を懸けている。厳密には作句以前の作者の思想や環境、時と場所等から忖度されるものを加えて、一句の力としてはならないと思う。厳正独立の一句、そこから言葉は始まらなければならない。(『まぼろしの鱶』後記より)

今は、「厳正独立の一句」というキーワードよりも、この文章を書いた三橋敏雄を、彼の俳句作品を、より愛するようになった。

次に『三橋敏雄全集』を読むときには、また新しい感慨が生まれるだろう。楽しみだ。

かもめ来よ天金の書をひらくたび  三橋敏雄

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