2014-11-02

落選展2014_21 ゐません ハードエッジ _テキスト

21 ゐません ハードエッジ

白梅は寒さの花と思ひけり
耳落すサンドヰッチや春の雪
泣く子ゐてあやす子がゐてあたたかし
青年は清と申す伊予の春
女學校からの仲よし桃の花
つぶらなるものを連ねて蝌蚪の紐
円板が一枚残り巣箱完
お涅槃を過ぎて仏生会も近し
花びらは花より小さし可愛らし
花満ちて新橋を発つ汽笛かな
遠足の列に入つてみたきかな
茶摘女に摘まれて痛き茶の木なり
新緑の走りといふが枝先に
幼くてさざ波立てる植田かな
ハンカチはチェックが好きで色々と
明るくて美しきものあり豆ごはん
嬉しくて飛び上りたる燕の子
ひたひたに睡蓮の水ありにけり
虻が来て牡丹の宙となりにけり
知恵の知と朱肉の朱にて蜘蛛といふ
身代りの如くに梅の干されある
朝顔の売れ残りたる日差かな
枝豆のつまみどころをつまみやる
面白きこともなき世の裸かな
蝿叩たたき殺してやるつもり
子を連れて涼みがてらに町の寺
仏壇に花新しき帰省かな
足下に大木のある神の滝
楽しくてたまらんといふ子規の忌ぞ
入りし刃にしくと切られし柿の種
啄まれ無花果の肉あからさま
月の出に土より生えし草の丈
虫籠の虫を放てばぴよんぴよんと
池に雨松の手入も済みたるよ
白のみにあらず白粉花楽し
白煙と黒煙が見ゆ秋の暮
蛇穴に入りたるころの高野山
九九をやや覚えて七五三十五
いやいやをしながら水洟を拭かれ
北窓を塞げば寒くなりにけり
菊焚くや綺麗な灰もおのづから
人知れずじつと氷つてゐたりけり
飛行機に数多の車輪クリスマス
工場の静かにあれば初鴉
雪折れのところに雪のなかりけり
ゐませんと毛布の中が応へけり
着膨れて玉の如くに冬籠
ホ句といふ手のひらのうた寒玉子
卒業のころを思へば卒業歌
とある日の神と佛と仔猫かな

2 comments:

上田信治 さんのコメント...

去年のハードエッジさんの50句には、「「口調」を手の内に、ほどよきリズム感をキープ。一連きもちよく読んだ」とコメントしたのですが、今年はどうでしょう、一読、口調の良さしか残らなかったような。たとえば麒麟さんなら、なんと言うだろう。気持ちよかったと言われるのか、案外、きびしい意見なのか、ちょっと聞いてみたいと思いました。

四羽 さんのコメント...

身代りの如くに梅の干されある
塩につけられ天日に干され、美しい実をこれでもかと痛めつけるのが梅干しだ。誰かの身代わりとなって打たれた実は辛く酸い。

枝豆のつまみどころをつまみやる
ビールをあおって枝豆をつまむ。なんにも考えていないリラックスタイム。指はつまみどころに吸い込まれるようにつまんでいく。

九九をやや覚えて七五三十五
九九のなかでも七五三十五はなんとなく語呂がよく、覚えやすい。しちごさんじゅうご、しちごさんじゅうご、なんとなく強そうでもある。

ふと思いついたフレーズをそのまま句にしていくような軽やかさがある。童謡のような調子が出ると面白い。