21 ゐません ハードエッジ
白梅は寒さの花と思ひけり
耳落すサンドヰッチや春の雪
泣く子ゐてあやす子がゐてあたたかし
青年は清と申す伊予の春
女學校からの仲よし桃の花
つぶらなるものを連ねて蝌蚪の紐
円板が一枚残り巣箱完
お涅槃を過ぎて仏生会も近し
花びらは花より小さし可愛らし
花満ちて新橋を発つ汽笛かな
遠足の列に入つてみたきかな
茶摘女に摘まれて痛き茶の木なり
新緑の走りといふが枝先に
幼くてさざ波立てる植田かな
ハンカチはチェックが好きで色々と
明るくて美しきものあり豆ごはん
嬉しくて飛び上りたる燕の子
ひたひたに睡蓮の水ありにけり
虻が来て牡丹の宙となりにけり
知恵の知と朱肉の朱にて蜘蛛といふ
身代りの如くに梅の干されある
朝顔の売れ残りたる日差かな
枝豆のつまみどころをつまみやる
面白きこともなき世の裸かな
蝿叩たたき殺してやるつもり
子を連れて涼みがてらに町の寺
仏壇に花新しき帰省かな
足下に大木のある神の滝
楽しくてたまらんといふ子規の忌ぞ
入りし刃にしくと切られし柿の種
啄まれ無花果の肉あからさま
月の出に土より生えし草の丈
虫籠の虫を放てばぴよんぴよんと
池に雨松の手入も済みたるよ
白のみにあらず白粉花楽し
白煙と黒煙が見ゆ秋の暮
蛇穴に入りたるころの高野山
九九をやや覚えて七五三十五
いやいやをしながら水洟を拭かれ
北窓を塞げば寒くなりにけり
菊焚くや綺麗な灰もおのづから
人知れずじつと氷つてゐたりけり
飛行機に数多の車輪クリスマス
工場の静かにあれば初鴉
雪折れのところに雪のなかりけり
ゐませんと毛布の中が応へけり
着膨れて玉の如くに冬籠
ホ句といふ手のひらのうた寒玉子
卒業のころを思へば卒業歌
とある日の神と佛と仔猫かな
2014-11-02
落選展2014_21 ゐません ハードエッジ _テキスト
登録:
コメントの投稿 (Atom)
2 comments:
去年のハードエッジさんの50句には、「「口調」を手の内に、ほどよきリズム感をキープ。一連きもちよく読んだ」とコメントしたのですが、今年はどうでしょう、一読、口調の良さしか残らなかったような。たとえば麒麟さんなら、なんと言うだろう。気持ちよかったと言われるのか、案外、きびしい意見なのか、ちょっと聞いてみたいと思いました。
身代りの如くに梅の干されある
塩につけられ天日に干され、美しい実をこれでもかと痛めつけるのが梅干しだ。誰かの身代わりとなって打たれた実は辛く酸い。
枝豆のつまみどころをつまみやる
ビールをあおって枝豆をつまむ。なんにも考えていないリラックスタイム。指はつまみどころに吸い込まれるようにつまんでいく。
九九をやや覚えて七五三十五
九九のなかでも七五三十五はなんとなく語呂がよく、覚えやすい。しちごさんじゅうご、しちごさんじゅうご、なんとなく強そうでもある。
ふと思いついたフレーズをそのまま句にしていくような軽やかさがある。童謡のような調子が出ると面白い。
コメントを投稿