【週俳・2015新年詠を読む】
祝う歌こそ楽しけれ
西原天気
鏡餅歯科医師レジスターを打つ 瀬戸正洋
年末年始に開けている歯科は、都会なら、ありそうです。そういう歯科はふだんも夜遅い時間帯にやっていたりする。
鏡餅は受け付けカウンターの後ろでしょうか。餅→歯科医→歯科医の指先。遠近法、あるいはズームアップ。
裏白や岬は空をつらぬけり 五島高資
反り返る羊歯の葉と、空をつらぬくように長く伸びる岬の相同。小景と大景の対照。儀礼と自然の照応。それらが、めでたさのなかにくっきりと描出されています。
初空や裏表紙だけ燃え残り 今井 聖
裏表紙を除くすべては空へ、けむりとなって。
新年が大きな口をあけて待つ 小林苑を
期待でも不安でもない。すぐそこにやってきているものの本性。
すこやかに腹減つてきし千代の春 齋藤朝比古
「千代」。くりかえしくりかえし腹が減る。そのことのすこやかさ、めでたさ。
新暦三箇所時計五個私室 小久保佳世子
三つ(三冊、三枚)ではなく三箇所なのですから、もう置かれた状態です。時計は五個とも動いていそうです。ちょっと怖いような可笑しな部屋。でも、それが「私室性」というものでしょう。
てのひらに遠き手の甲年明くる 山田露結
地球の裏側的遠さ。
重箱を泡に放りし二日かな 小早川忠義
二日には早くも洗い物。泡の白さと塗りの濃い色。
静岡は良いところなり初笑 西村麒麟
富士山が見える句。
塩つまむやうにめくりし初暦 鈴木健司
浄めの塩も連想させます。除夜の鐘でまっさら・無罪になった私たちに、また始まる一年。
しづまらぬ一点のあり雑煮椀 阪西敦子
どことも言えぬ一点。同時に、一面ほぼすべて鎮まったことの醸し出す空気。
お降りのはじめは鳥のやうな息 渡戸 舫
空に発生する事象のかそけさ。
お降りの糸散らばつてゐる東京 宮本佳世乃
それも地上に達すれば、かそけくもない。
≫2015新年詠
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2015/01/402201414.html
2015-02-01
【週俳・2015新年詠を読む】祝う歌こそ楽しけれ 西原天気
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿