2015-02-01

【週俳・2015新年詠を読む】祝う歌こそ楽しけれ 西原天気

【週俳・2015新年詠を読む】
祝う歌こそ楽しけれ

西原天気


鏡餅歯科医師レジスターを打つ  瀬戸正洋

年末年始に開けている歯科は、都会なら、ありそうです。そういう歯科はふだんも夜遅い時間帯にやっていたりする。

鏡餅は受け付けカウンターの後ろでしょうか。餅→歯科医→歯科医の指先。遠近法、あるいはズームアップ。

裏白や岬は空をつらぬけり  五島高資

反り返る羊歯の葉と、空をつらぬくように長く伸びる岬の相同。小景と大景の対照。儀礼と自然の照応。それらが、めでたさのなかにくっきりと描出されています。

初空や裏表紙だけ燃え残り  今井 聖

裏表紙を除くすべては空へ、けむりとなって。

新年が大きな口をあけて待つ  小林苑を

期待でも不安でもない。すぐそこにやってきているものの本性。

すこやかに腹減つてきし千代の春  齋藤朝比古

「千代」。くりかえしくりかえし腹が減る。そのことのすこやかさ、めでたさ。

新暦三箇所時計五個私室  小久保佳世子

三つ(三冊、三枚)ではなく三箇所なのですから、もう置かれた状態です。時計は五個とも動いていそうです。ちょっと怖いような可笑しな部屋。でも、それが「私室性」というものでしょう。

てのひらに遠き手の甲年明くる  山田露結

地球の裏側的遠さ。

重箱を泡に放りし二日かな  小早川忠義

二日には早くも洗い物。泡の白さと塗りの濃い色。

静岡は良いところなり初笑  西村麒麟

富士山が見える句。

塩つまむやうにめくりし初暦  鈴木健司

浄めの塩も連想させます。除夜の鐘でまっさら・無罪になった私たちに、また始まる一年。

しづまらぬ一点のあり雑煮椀  阪西敦子

どことも言えぬ一点。同時に、一面ほぼすべて鎮まったことの醸し出す空気。

お降りのはじめは鳥のやうな息  渡戸 舫

空に発生する事象のかそけさ。

お降りの糸散らばつてゐる東京  宮本佳世乃

それも地上に達すれば、かそけくもない。


≫2015新年詠
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