2015-06-21

〔ハイクふぃくしょん〕パシリ 中嶋憲武

〔ハイクふぃくしょん〕
パシリ

中嶋憲武


『炎環』2014年11月号より転載

時というものは、得てしてあっという間に過ぎるものだから、僕はコンビニへ行く。

午前四時三十五分。この時期のこの時間はすでに明るく。捕まったのはムロトケンタ二十一歳。遊ぶ金が欲しくてやった、と供述しています。うんぬん。そういう風に報道される様子を思い浮かべながら、煌々とした灯りの店の奥の冷蔵庫から一・五リットルのコーラを半ダース、籠に入れ両手に抱えてレジへ進む。

レジには、五十がらみの禿げ隠しに坊主頭にしていると思われる、人の好さそうな男が一人。籠をレジカウンターに載せ、僕はコーラを運ぶための段ボールを要求した。少々お待ちを。男は言って店の後ろの倉庫に段ボールを取りに行った。僕はカウンター内に入ると、レジのドロアーを引き出し、あるだけの札を掴んだ。

十三万七千円。それが僕の取った全額だった。店の前に停めてあった自転車に飛び乗り、待ち合わせの公園へ急いだ。

公園の脇にクラウンマジェスタが停まっていた。ヨウジだ。中学の二学年上の先輩。カスミという肉感的な女を連れている。後部座席へ滑り込むと戦果を聞かれたので、答えるとヨウジは「イエイ」と叫び、振り向いて片手ハイタッチをした。自転車は公園脇に乗り捨てて、計画通り南へ向かう。しかしこの先の計画はない。カーラジオの天気予報で、週末は夏至だと言っていた。カスミが、ねえねえ知ってるぅ。スウェーデンでは夏至ってセックスのお祭なんだってぇ。ゲシって響き、ヒワーイ。お前の方が卑猥だよと思いつつ、セックスという言葉にクラクラする。

夜。ファミレスで飯を食い、国道沿いのコテージタイプのホテルに入る。シャワーを浴びたカスミがシャーベットローズのバスタオル一枚で隣に座った。今度ぉまた成功したらぁ、景品はわたしぃ。マジでか。そう囁かれて、必ず成功するぞと誓った自分が悲しい。

夕べは眠れなかった。一晩中、ヨウジに攻められるカスミの悦びの声を聞かされた。おまけにフロアーマットの上で寝ていたので体が痛い。コンディションは最悪。だがそんな事にはお構いなく、ヨウジは車を発車した。

午前七時半。バス停の傍のコンビニを、バスを待つ振りをして窺う。老婆が一人入って行った。……店員がカウンターから出てレジに背を向けて接客している。するするっと僕は入店し、開いているレジから札を掴み出し、走った。泥棒!という声を背後に。

ヨウジに戦果の七万二千円を見せると、イエイと言ってハイタッチした。

夜。ファミレスの駐車場でカスミに、「景品」と一言。はあ?あれはねあんたのモチベーションを上げる為の嘘。あんたみたいな精薄とヤル訳ないっしょ。勘違いしないでよねぇ。なんと。僕はつかつかと車へ歩み寄るカスミの背中を見ていた。薄着の背中のブラジャーの留め具の辺りを。あの女。絶対殺す。

夏至近き夜の花柄のバスタオル  山口紹子

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