2015-11-01

2015角川俳句賞落選展 12 加藤御影「蛇苺」テキスト

12. 加藤御影 「蛇苺」

春日や地に重力といふ優しさ
手になにも持たずに歩くあたたかし
陰雪や窓の向かうで口うごく
ほの暗く昨日がありぬ木の芽風
影響を怖れつ読めり春の宵
街路樹を伐りぽつかりと朧なる
揺れやすき枝に心寄る桜かな
花満てる空へ花韮ひらきくる
おのが葉の蔭に苺の花咲けり
シクラメン咲いてはなびらふれあへる
春心や指に吸ひつく水の面
蝌蚪すくひ他愛なき口見えにけり
つばくらの軌道しばらく空にあり
目薬の蓄ふ春のひかりかな
夏蝶の翅よりの風目見に受く
考ふることの快楽や桐の花
電柱のかすかな撓ひ夏の月
きのふけふきのふあめんぼの水輪
万緑や小鳥の屍つかみ出す
正視せる向日葵ふつと見失ふ
蛇苺摘まれて蔕に紅残る
空蝉のそびら内へと捲れをり
喉に入る餌の透き見ゆる金魚かな
何の花露台の母が枯らしゐる
冷房やビデオゲームに死瞬く
穴なべて空に繋がる百日紅
風鈴の短冊とせし枝折かな
白桃の手ざはり肱にまで伝ふ
撫子の蘂渦まいて花の奥
画の外の消失点や昼の月
当籤のやうに白鶺鴒降り来
陥穽の如く暇あり木の実雨
瞑目の闇に奥ある十三夜
瀝青の目に粉々の黄葉かな
森覗くやうに林檎の緋を覗く
栗を喰ふ一瞬栗の形の唇
遣ふ当てなき方眼紙秋の暮
倒れたる空壜の先虫の闇
寒林や包帯解けて地に垂るる
思ふより深く視線が枯藪に
山茶花の塵へ全き蘂降りぬ
しぐるるや切絵のむすめ白眼無き
指にある爪は肉色寒の雨
寒苺累々と乳を垂れあへり
寒卵喉押しのけつつ通る
頭蓋骨一杯に沢庵の音
あかあかとてのひら舞へり雪兎
街じゆうの影濡れてをり雪達磨
湯呑置くちからの加減日脚伸ぶ
思はねば我消えぬべし冬金魚



加藤御影 かとう・みかげ 
無所属

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