2017-07-23

作品 バチあたり兄さん 竹岡一郎

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バチあたり兄さん 竹岡一郎

卯の花くたし面会謝絶の兄へ羽音
蛇となる途中の廊下拭き磨く
鏡工房金魚らの鰭発火まぎは
守宮搗く兄のまたたくまの違背
乗れば煌々さみだれに吼え蝶一頭
道行の浜の軋みは蟹と舟
遠浅や水母と赤子なであへる
二百年生きた金魚は兄と化す
猫や木霊や殊に螢になつかるる
ひじり顕現あじさいの呑む空地には
蟹斬る兄こそ崖の見世物だ拍手
祭とほし土偶ほどけて縄となる
幽谷や鞄より出す大鮑
この年も兄の土下座が梅雨晴らす
うねうねと肉削ぐ手際朱夏に得し
位牌数万山越えてより蕩けあふ
蛸に似るまで坂ころげ迫る兄
おのが血に中り蚊柱へ体当り
化石売場の花氷すぐ割れる
暑気あたりして銅像と融合す
赤剝けの兄へ集へり瑠璃蜥蜴
くしけづる音の奧処の天瓜粉
明日も生きたいあなたが憑いて瀧ねばる
兄去りし町はででむしだらけの夜
袋掛桃のいづれかが禁忌
帝劇夜涼割腹あまた揉み消され
青田よりあふぐ暗愚の兄の址
逃げきれぬお前だ合歓を点し消し
澪照らし合うて鵜舟とうつほ舟
呪詛生霊三輪素麺で搦めます
兄棄ててあたしの髪に涼んでよ
瓜畑めざめて目鼻掻き集む
橋は関なり悦びに史観灼き
怖づ怖づと征きひまはりに振り向かれ
泣いて無意味な兄も素敵な土用波
手花火の終りちかづく誰何かな
草いきれ固めて僕として立たす
灯台へ息むらさきの少女兵
縄目捺されて形代の兄高鳴るや
まらうどの晴の跫音のいづみ震(ふ)る



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