2018-05-20

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 第51回 奥村チヨ「恋のエクリチュール」

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第51回 奥村チヨ「恋のエクリチュール」


天気●奥村チヨ最強説というのを唱えていまして、何が最強なのか、よくわからないですが、歌番組や芸能界から姿が消えてだいぶ経った頃にとつぜん出てきたのが「恋のエクリチュール」です。

【音声
https://drive.google.com/file/d/1vkuOTfNaPfwiShGw_z9CieJsLzR2FF7-/view


憲武●この曲、知らなかったんですけど、なるほど最強ですね。チャイナ風のイントロがいいです。

天気●1988年発売の『ソリッドレコード夢のアルバム』というコンピレーション・アルバムがありまして(詳しくはwikipediaでどうぞ)、当時の若手が60年代のポップス歌謡の歌手の楽曲を手がけ、歌ってもらうという企画。新しいことをやるんじゃなくて、60年代テイスト、とりわけ歌手の特徴を活かして、焼き直したという感じです。その冒頭1曲目がこの「恋のエクリチュール」。

憲武●歌詞はサエキけんぞう、作曲が沖山優司ですね。88年当時、奥村チヨは40歳そこそこでしたけど、まったく年齢を感じさせない容姿と歌声でしたね。

天気●音はノーザンソウルを粗くしたかんじ。歌唱はおなじみのお色気過剰で独特。これって世界でも類を見ないですよね。女性のセクシー路線というと、ヘレン・メリルや青江三奈のハスキーヴォイスか、クローディーヌ・ロンジェなどウィスパリング歌唱。ところが、これでもかってくらいネットリですから。

憲武●ところがこのネットリが、まったく嫌な感じしないんです。パーソナルな魅力になってる。ぼくは、小学3年のとき、奥村チヨの魅力に気付いたんです。

天気●それにしても、エクリチュールってワケがわからんでしょう。アヴァンチュールからのチュール繋がり。

憲武●なんだそりゃサエキけんぞうって感じですね。

天気●この曲、1969年から70年の「恋の奴隷」「恋泥棒」「恋狂い」3部作(いずれも作詞なかにし礼)からすると、先祖返りのようでもあります。

憲武●その辺は意識したんじゃないですか。3部作の頃は、絶頂期でもありましたから。

天気●なおかつ、歌い癖を強調することで、自身をパロディーにしているようなおもむきもあって、滋味深い。

憲武●奥村チヨは今年限りで芸能活動から引退するようです。71歳です。スゴイです。でもヘレン・メリルは去年86歳で引退しましたからね。

天気●そうなんですか。引退の年に、この音楽千夜一夜で取り上げることができて、感無量です。


(最終回まで、あと950夜) 
(次回は中嶋憲武の推薦曲)

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