〔今週号の表紙〕
第585号 影法師
木岡さい
武将が来た。三日月の夜。我が家の塀が仄暗く浮かびあがる。高さは十メートルほど。隣家との境界だ。塀の上から兜が突き出し影法師になって見える。目を凝らし猫だと気が付いた。
隣人が飼っている猫をたまに拙宅で見掛ける。開いた勝手口から悠々と入ってくる。勝手口が閉まっていると破れに体をくいくいとねじり込む。壁を伝い夾竹桃にはらりと飛び降り、猫は来る。
黒猫一匹だと思っていたが、ある日、二匹の黒猫が連れだって来た。ユリ根色に飴色のたてがみが交じる猫も一匹現れた。
結局、何匹が居るのか分からない。どの猫も静かに来ては静かに出て行く。
月が見せてくれる姿がある。今日の夜空は何を映すだろうか。
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