2018-07-08

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 第58回 高中正義「Blue Lagoon」

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第58回 高中正義「Blue Lagoon」

憲武●梅雨が明けてしまいました。梅雨が明けて7月の声を聞くと、心の奥深いところでワクワクとしてくるんですよね。何があるってわけでもないんですが。そんな時期に聴きたいのはこれでしょうか。



憲武●高中正義はサディスティック・ミカ・バンド、サディスティックス、それからソロになりました。フュージョン、当時はクロスオーヴァーと言ってましたが、フュージョン寄りのインストゥルメンタルを中心に活動、青いギターが印象的です。

天気●YAMAHAのね。当時、烏賊ギターって呼んでました。

憲武●烏賊! 70年代の半ばくらいからミュージシャンの間で南洋志向があったと思うんですが、高中正義もファーストアルバムから、セイシェルでしたね。トロピカルな雰囲気の。

天気●熱帯=明るい、明るい=ハッピー、みたいな?

憲武●そのノリだったと思います。熱帯が悲しいとは思ってなかったかと。

天気●レヴィ=ストロースじゃないわけです。

憲武●学生の頃、映画研究部で8ミリ映画撮ってたんですけど、この曲ね、結構使われてると思うんです。BGMとかテーマ曲に。みんな著作権とか無頓着に既成の曲をがんがん使ってましたから。

天気●へえ、それは意外。コマーシャリズム一直線な曲じゃないですか。自主制作映画とは逆の路線かと思ってた。シニックに、パロディー的に使ったんですかね?

憲武●そんなことは全然ないです。気に入ったから使う、そんな感じじゃないですか。ぼくが聞いたのは、今関あきよし監督のPFF作品、当時はオフシアターフィルムフェスティバルと言ってましたかね、「oranging'79」っていう30分弱の映画。今関宅で観ました。主人公の三留まゆみがラスト江の島から浮輪でアメリカを目指すって映画なんです。

天気●「風船おじさん」ならぬ「浮輪ねえちゃん」?

憲武●ははは。その頃はそんな結末をファンタジーとして昇華してしまう余地が世間にはありましたよ。今関さんは、手塚眞、小林弘利、犬童一心なんかと一緒にMOVIE MATE100%という映像製作集団にいて、豊島区民会館などでよく上映会とかやってました。

天気●サブカル草創期、あるいはサブカル前夜?

憲武●そういった時期でしょうか。面白かったのは、「5月は葉っぱの大行進」と称して、葉っぱ一枚持ってくれば観ることが出来るという上映会。大盛況でしたね。

天気●なんか牧歌的。

憲武●ぼくも自分の作品で使用しましたよ。「伊豆甘夏納豆売り」とかね。

天気●カリプソのピーナツ・ヴェンダー(南京豆売り)のもじり?

憲武●タイトルはそこから着想得てるかもしれませんが、曲調は、寂れた伊豆のとある町の、淋しい夏って感じ。あれっ? BLUE LAGOONは、「oranging'79」じゃなくて、「赤い毛糸の転がる坂道」だったかも。

天気●いや、それ、どっちでもいいっす。


(最終回まで、あと943夜) 
(次回は西原天気の推薦曲)

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