2018-08-05

2017落選展を読む 10. 「高梨章 そのあかるさを雨といふ 」   上田信治

2017落選展を読む 
10.「高梨章 そのあかるさを雨といふ

上田信治

高梨章 「そのあかるさを雨といふ」  ≫読む

ほとんど春の句で書ききった、50句。

早春の窓の夜あけやパンの耳

「窓の」の三文字。早春の夜明け、じゃあバラバラ。明るさが四角く限定されることで、パンの耳との関係が効いてくる。

早春の床にミルクの白さかな
早春のもうぬれてゐる光かな
早春の吸取紙もぬれてゐる
早春の水の底まで水の空


同一季語5並び。床にミルクがこぼれたとも、こぼれていないとも読める面白さ。吸取紙が濡れていることの一回性(その前の一句はフリなのだろうか。大胆w)5句目はやや読みにくいけれど、「水が底まで水であるところの」早春の空、と読んだ。

ぽつかりと口をひらいた春の駅
空をおりるやうにひとびと春の駅


無防備といっていい、ふわっとした言葉のつながりと、童話的な発想。その二つの道具が、きわどいバランスで使われて、目の前にある句は、ふわっとどころか、エッジが立っている。

母と子とねむるヒバリのゐない空
ひつそりとあのこは病気風ぐるま
よわくよわく指はひらかれ牡丹雪


抒情性と、感傷性を、自分はあまり区別しておらず、その差は、読者が、その書き手を信用するか否かだけのことではないかと思う。

この人のことは、信じました。それはちょっとした調子とか、語のあっせんによる

石鹸玉空のうしろへ消えにけり
雲雀鳴く蛇口のなかの細き闇
蜂の屍やほんのわづかな塩の味


例年、落選展にご参加。ほとんどまったく一人で書いてこられたのだそうだ。

こういう玄人性から遠くあることを選び取った書き手を、プロ俳人は評価しにくいだろうと思うのだけれど「円錐」の第二回新鋭作品賞で、山田耕司さん推薦で、この人の20句が、受賞したのは、さすがすぎる。

「秋と幾何学」 ≫読む

こういう方をご紹介できるから、落選展も、やっていてよかったと思う。

2017角川俳句賞「落選展」

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