2018-08-19

2017落選展を読む 11. 「ハードエッジ 豚カツ」 上田信治

2017落選展を読む 
11.「ハードエッジ 豚カツ

上田信治

ハードエッジ 「豚カツ ≫読む 

この50句には、いま俳句いっぱんに流通している基準から、わりと自由に書かれている感触があって、賞応募作といえども、俳句が採点競技のようであったらつまらないので、その自由さは、まず好ましい。

大いなるシーツが飛んで花吹雪
花ふぶき張子の虎も吠ゆるかな


発想は「月並」ふうだけれど(なんか子規以前というかんじ)イラスト的にイメージを構成したり。

客布団黴を寄せじと絢爛に
水族館に海の一族注連飾


なにかそれこそ「絢爛」たるものを見せようという。

噛み抱くは子猫の時のタオルなり

「噛み抱くは」という言い方の粘っこさが、猫のあそびのしつっこさに通じて、言葉に質感がある(この句については、季語がないことより、「の時の」が示す内容のあいまいさが気になる)。

南瓜煮て一晩寝かす手紙かな
干布団枯野の見ゆる丘の上


「手紙」と「南瓜」、「干布団」と「枯野」それぞれに、句中の主体も加えた、位置と時間の関係があいまいで、そこに面白さが生じているような、いないような(「ビニールも儚かりしが蛇の衣」も、そう)一見、腰折れのようで、裏側できっちり第三項的なものをたちあげている、この書き方の大成功句が読んでみたい。というか、自分が書きたい。

ゆるやかに階段状の雪として

「として」もまた、あいまいで「として……何?」とつっこみたくなるけれど、『「ゆるやかに階段状の雪として」雪がある』という、冗語の面白さは見逃せない。

水仙を切つてぽたぽたしてゐたる
豚カツを母が作るよ春休


かわいい。

読者として、楽しませていただきました。



2017角川俳句賞「落選展」 

1 comments:

ハードエッジ さんのコメント...

上田信治様:

お読みいただき、ありがとうございます

作者としても、
改めて、読み返してみました

すると、
応募当時、
あんなに輝いていた50句が、
こうまで色褪せてしまうものかと驚くのです

それでも、
例年と違い、
締切当日までに、十分な推敲が出来た、
記念すべき50句でした

全滅ではなく、
多少は、句集に残せる作品もありそうです


以下、自解少々

噛み抱くは子猫の時のタオルなり ハードエッジ

「ライナスの毛布」系

「子猫」が季語になってないのに、
初めて気が付きました 感謝


干布団枯野の見ゆる丘の上 ハードエッジ

遠山に日の当りたる枯野かな 高濱虚子
と、
『港が見える丘』平野愛子
の融合作品

視点が混乱してます 要推敲


ゆるやかに階段状の雪として ハードエッジ

「階段」俳句は数多くあります
わがデータベース(55万句)には180句ほど
(内、階段+雪=7句)

しかし、
「階段状」は見当りません

景は平凡ですが、
「階段状」に賭けてみました

取り上げていただき嬉しいです

以上/2018.8.21

p.s.
今年も、去年を上回る推敲数による、
会心の!過去最高の!50句を応募しました

が、
現在まで、
角川から何の連絡もないので、
多分、また、落選展(連続出場記録更新中)で
お目にかかります (^_^)/