中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第61回 シスター・ロゼッタ・サープ「The Lonesome Road」
第61回 シスター・ロゼッタ・サープ「The Lonesome Road」
天気●前々回にちょっと紹介したシスター・ロゼッタ・サープを取り上げようかと思います。「The Lonesome Road」をどうぞ。
天気●ゴスペルのビッグバンド・アレンジ。この時期、というのはデビュー当時かな、ギターを持たずに、ラッキー・ミリンダー・オーケストラとの共演がいくつか残っているようです。
憲武●ラッキー・ミリンダーって、別の動画を観ると指揮をしながら、くるっと回ったり、足を上げたり、お調子者のようですね。
天気●シスター・ロゼッタ・サープをはじめて聴いた/観たのが、この動画でした。30年くらい前、Vディスクといって、第二次世界大戦の戦地へ、ジャズのSP盤をたくさん送った。ビニール盤での慰問ですね。それこそ前線に飛行機から投下したらしい。その音源・動画をまとめて見る機会があって、私の記憶では、その流れでこうした動画もたくさん観た。
憲武●この動画、昭和16年ですね。12月8日には日本軍が真珠湾攻撃をしている。
天気●動画が慰問目的かどうかは忘れました。ちょっと調べたけれど、わからなかったんだけど、いずれにせよ、漫才や歌手が慰問団として現地に出かけた日本とはずいぶん違う。
憲武●そうですね。ダンスや演奏のパフォーマンスのエネルギーからして違ってる。
天気●さて、この動画。シスター・ロゼッタ・サープの歌いっぷりの素晴らしさです。ゴスペル乗りとはかけ離れたキャバレーのダンスなどが節操なくフィル・インするのですが、そんな雑音などお構いなしに、高らかに歌いきる。これを観たとき、一発で、惚れましたよ。
憲武●はい、迫力があります。
天気●一方、やはりギターを弾きながらも捨てがたく、この人のウリなので、聴いておきましょう。いろいろあるのですが、ギターの音色や弾きっぷりの点から、前々回に聴いた「Up Above My Head」を再び。
天気●パッと見、大阪にいそうです。面構えといいい、ワンピースの柄といい。歌とギターの巧いお好み焼き屋のおばちゃんといえばいいでしょうか。
憲武●大阪!いそうです。来月行ってみようかと思ってるんです。探してみます。大阪のシスター・ロゼッタ・サープを。
天気●ギターの音色は、いま聴くと、ちょっと驚きなんですが、ディストーション(歪んだ音)を機材でなくナチュラルに出してる。ギブソンSG(ギターの機種です)特有のちょっと甘く緩いディストーション。「へえ、この時代にすでに?」という驚きです。
憲武●こういうのを見ちゃうと、現代のバンドのなんか物足りない感じの、理由の一端が分かるような気がします。
天気●まあ、こういうのは、魂のパワーというかね。声一発、ギター一発、表情一発で、ぜんぶ持って行かれます。
(最終回まで、あと940夜)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
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