中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
キッド・コアラ「ムーン・リヴァー」
天気●秋なので、「ムーン・リヴァー」を聴いてみようと思うんですが、偉大なスタンダードなので、歌も演奏もそれこそ腐るほどあります。どうせなら、変わったもの、変態的にユニークなもということで、これ。
天気●キッド・コアラという人、よく知らないのですが、中国系カナダ人で、ターンテーブリスト。DJじゃなくて、ターンテーブリスト。そんな範疇があること自体、恥ずかしながら初めて知ったのですが、なるほど、ターンテーブル操作を駆使する。
憲武●ううむ。ターンテーブリスト。初めて聞きました。。手塚眞が自らヴィジュアリストと名乗ったのを聞いた以来の衝撃です。こういった人たちは元来DJと簡単に呼ばれていましたよね。
天気●詳しいことはわからないし、知らないのですが、いろいろな音源を混ぜるんじゃなくて、オードリー・ヘップバーン版を素敵に捻じ曲げていく。
憲武●捻じ曲がってます。相当な頻度で。アヴァンギャルドのようでもある。
天気●途中の間奏部分は、捻じ曲げ方がすごくて、盛り上がります。歌は、それほど捻じ曲げるわけにはいかないでしょうから。ヘップバーンですしね。
憲武●いや、それはもう。捻じ曲げてもらっては困ります。リスペクトがないと。オードリー・ヘプバーン扮するホリー・ゴライトリーが、窓辺に座ってギターをつま弾きながら歌うシーンがすぐ浮かびますしね。ラストは雨の中なんですけど、泣けました。
天気●70年代までの音楽体験で止まっていて、以降は、きほんそれを一生聴いて暮らせる感じ。新しい(ってことはないか?)ものはほとんど知らないのですが、当世のDJプレイもサンプリングもかなり好きなんですよね。
憲武●ぼくも好きですよ。友人の結婚パーティーで、ターンテーブルを用意して後輩と2人でDJやったこともあります。Tokyo suisui clubというユニット名で。恥ずかしい!
天気●音楽は引用、と思っているので、それを先鋭化すれば、サンプリングとかそのへんに行き着く。ついでにいえば、俳句も言葉も引用なので、そのへんは自分の中でつながるのかも。
憲武●なるほど。
天気●で、ムーン・リヴァーですが、ああ、もう、これはもう、名曲。胸がいっぱいになります。
(最終回まで、あと886夜)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
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