〔週俳10月の俳句を読む〕
石原ユキオ
お姉さんの妄想
週刊俳句高校生特集の中で、とびぬけて「高校生キャラ」の作り方が上手いのは福田若之さんではないでしょうか。「海鳴」は、ブレザー姿の今時の男子高校生を主人公にして読みたい作品でした。男子高校生に「合鍵」という組み合わせで、欲求不満気味のお姉さんの妄想はノンストップでした。以下、その妄想のごく一部を書いておきます。
高校二年生の彼には、年上の恋人がいる。年上といってもまだ二十歳をいくつか過ぎただけの会社員。彼にしてみれば彼女はおとなで、かっこよくて、たまに頼りなくて、すごく愛おしい。
学校では真面目君ってことになっている。恋人の存在は、誰にも知られていない。首のぐるりをキスマークだらけにして寝ぼけ眼で登校してくる同級生を、彼はガキっぽいと思っている。
合鍵は銀河に浮いてゐるらしい 福田若之
彼女の部屋には何度も入った。合鍵をもらえる気配はない。帰り際に玄関で見るのは、彼とのデートでは決してはくことのない黒いブーツ。ブーツキーパーなしで不思議に直立している。(家で見る母親のブーツは変なぬいぐるみ付きのブーツキーパーを突っ込まれて、よっこらしょと立ち上がっているのに)
硬いレザーの内側に漆黒の闇がある。神秘とか、謎とか、彼女の奥にある届きそうで届かない領域みたいに。
長靴に闇がすつぽりある夜寒
ある日、彼は唐突に彼女の婚約を知らされる。ここで私の頭の中に鳴り響くのはKinkiKidsの『硝子の少年』だが、若い人はきっともっと新しくてぴったりの曲を流すのだろう。
彼は、彼女のウェディングドレス姿を想像する。明るい空の下で、彼女の華奢な手が花束を高く投げ上げる。
豊年のブーケの高く上がりけり
花束の描く放物線を思いながら放り投げてみたナッツは、ほっぺたを打って、地面に転がった。
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2008-11-02
〔週俳10月の俳句を読む〕石原ユキオ お姉さんの妄想
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2 comments:
おもろい。
手々噛む鰯のような文章でした。
インターネット媒体には、紙の媒体で発表するときのような「著者近影」が付けられない、という制約があります。この文章を読むと、「著者近影」が欲しいような欲しくないような微妙な気分です。ちなみに、「著者」はこの文章の書き手と、原句の作者両方です。
ありがとうございます。
石原ユキオの動く著者近影は2008年11月15日よりポレポレ東中野で公開されます。
インターネットでも、「著者近影」つきのような状態で作品を発表されてる方はいらっしゃるようです。
(三角みづ紀さんとか)
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