後記 ● 山口優夢
先週、約30年ぶりに復活したアリスのコンサートに行ってきました。僕は20歳代なので、もちろんアリスの現役時代を知っている世代ではないのですが、それでも「秋止符」「帰らざる日々」「遠くで汽笛を聞きながら」「冬の稲妻」「エスピオナージ」「今はもう誰も」そしてなんといっても「チャンピオン」、これらの名曲の数々は僕の大好きな歌なのです。
心を閉じたまま暮らしてゆこう
遠くで汽笛を聞きながら
何もいいことがなかったこの街で(「遠くで汽笛を聞きながら」)
やけに男くさかったり、ひどく女々しかったり、そういう言葉をダイレクトに心に投げてくる歌詞。40代、50代の中年男性や中年女性の方々が盛り上がる中、僕もまたなんの違和感もなく一緒に盛り上がってきました。
コンサートの最後に歌ったのは「チャンピオン」。これはアリスの代表曲と言って差し支えないでしょう。会場全体のボルテージが明らかにぐいぐい上がってゆくのを肌で感じて、ふとアリーナを見てみると、中年男性や女性の方々が全員総立ちで、踊り狂う緑や赤の照明の中で拳を突き立てているのでした。
その様子を見て、ああ、俳句ではなかなかこういうことはできないな、と僕は思ったものです。その場にいる数百人を熱狂させる俳句。想像し難いです。その場にいるみんなが納得する句や、その場にいる何人かがうなづく句、その場にいる数人が妙に興奮する俳句、ならありそうですが。
でも、やっぱり、なんというか、句会場で拳を突き上げるのは恥ずかしいですが、心ひそかに俳句に熱狂していたいです。なんて、書いちゃうのも恥ずかしいくらいですが、本当に、心の奥では、拳突き上げてるみんなに負けないぜ、ってくらいに、熱狂していたい。です。恥ずかしい。
・・・翌日、1つ年下の俳人にアリスのコンサートに行ってきたと言ったら、彼女はアリスそのものを知りませんでした。どうやら心理的な世代較差が甚だしいみたいです。
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「落選展2009」も、引きつづきご感想、コメントをいただけましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。
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ではまた、次の日曜日にお会いしましょう。
no.135/2009-11-22 profile
■対馬康子 つしま・やすこ
1953年高松市生まれ。19歳の時、中島斌雄主宰「麦」入会。「原生林」学外参加。1990年、有馬朗人主宰「天為」創刊に参画。94年、朝日新聞国際衛星版「アジア俳壇」創設・選者。2001年より「天為」編集長。「麦」同人、「芝不器男俳句新人賞」選考委員。
■豊里友行 とよざと・ともゆき
1976年、沖縄県生まれ。2003年12月、句集『バーコードの森』発刊。第37回沖縄タイムス芸術選賞奨励賞(文学部門・俳句)受賞。出版社「沖縄書房」代表。現代俳句協会会員。「月と太陽(ティダ)」俳句会代表。「海程」俳句会会員。ブログ「とよチャンネル」
■堀本 吟 ほりもと・ぎん
1942 年、犬山市生まれ、松山市育ち、生駒市在住。俳歴20年ほど。「船団」を経て「豈」所属。1970-80年代の俳句ニューウエーブの群像にまき込まれるよ うに短詩形文学の場に入る。この世代からの影響は大きい。現在の新世代も全く異ジャンル、新鮮である。ここ4、5年は川柳と俳句の接点の表情をみることに 腐心した。そこからすこし進んで、現代詩の根拠に定型の問題を措きたいと考えている。著書、評論集『霧くらげ何処へ』(深夜叢書社)。
■山口優夢 やまぐち・ゆうむ
1985 年、東京生まれ。東京大学大学院修士課程2年。東大・早稲田など東京の学生俳句サークルやTHCの句会などに参加。第六回俳句甲子園団体優勝・個人最優秀 賞。第 二回龍谷大学青春俳句大賞大学生部門最優秀賞。第四回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。好きな惑星は火星。ブログ「そらはなないろ」
■中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。
■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)。2月1日に、第三号を発行。入手希望の方は、 yutakanoguti@mail.goo.ne.jpまで。進呈します。 サイト「野口家のホームページ」
■さいばら天気 さいばら・てんき
1955年兵庫県生まれ。1997年「月天」句会で俳句を始める。1998~2007年「麦」在籍。現在「豆の木」会員。現代俳句協会会員。2003年「麦」新人賞、05年、06年「豆の木賞」受賞。ブログ「七曜堂」
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