2010-06-13

後記+プロフィール164

後記 ● 山口優夢
今週の週刊俳句は、いま巷で話題のゼロ年代の100句のことや若手の季語意識のことには一度くるりと背を向けていろいろトピックを用意してみました。いいんです、いいんです。背を向けたと思ったらくるんと一回転して結局話がつながったりするものですから。

まずは寒雷出身の今井聖氏が同じく寒雷出身の兄弟子にあたる金子兜太氏の俳句をどのように受容してきたかを語ってくださっている「極私的「金子兜太」体験」。今井氏における金子兜太受容史を概観することで、今井氏に影響を与えた父の価値観、師の姿勢が透けて見えてくるというところ、大変面白いです。金子兜太(の俳句)の手引きであると同時に今井聖(の価値観)の手引きとも言えるこの記事は、今井氏の近著『ライク・ア・ローリングストーン』に通じる雰囲気も持っており、読んで飽きません。

そして瀬戸正洋さんの小特集。「美術的」でもなく「小説的」でもなく、「ものを言わないスタイル」という上田信治の指摘は、瀬戸正洋(の俳句)を表していると同時に上田信治(の価値観)を表してもいるのでしょう。批評はある意味、俳句そのものよりもその俳人をよく表すことがあるのかもしれません。

さらに3月から続いて来た連載、猫髭氏の「オーロラ吟行」が今週号で最終回を迎えました。荷物が所在不明になり、水温と気温の差が60°C以上という露天風呂に湯あたりし、犬ぞりから振り落とされるという波乱万丈な旅も今回が見おさめとくれば、注目せずにはいられないというものでしょう。それにしても出てくる食べ物がどれもおいしそうで目移りします。

今週はさらに去年の9月以来の登場となる「スズキさん」、先週からの新連載「今週の五七五」などの企画が目白押し!という号になりました。

実は自分の原稿が、この後記を書いている時点で全然書けていないのですが…。



それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。


no.164/2010-6-13  profile

■茅根知子 ちのね・ともこ
1957年東京生れ。1999年「魚座」入会。「魚座」終刊にともない2007年より「雲」同人。2009年「雲」退会。第4回(2001年)「魚座」新人賞。第15回(2001年)俳壇賞。句集『眠るまで』(本阿弥書店)。俳人協会会員。

■今井 聖 いまい・せい
1950年生まれ。加藤楸邨に師事。現在「街」主宰。句集に『北限』、『谷間の家具』、『バーベルに月乗せて』。エッセー集『ライク・ア・ローリングストーン 俳句少年漂流記』。脚本も書く。映画「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」。「街」HP


■瀬戸正洋 せと・せいよう
1954年生まれ。月刊俳句同人誌「里」所属。

■猫髭 ねこひげ
「きっこのハイヒー ル」所属。サイト「三畳の猫髭」

■中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、 「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。

■太田うさぎ おおた・うさぎ
1963年東京生まれ。「豆の木」「雷魚」会員。現代俳句協会会員。

■野口 裕 の ぐち・ゆたか
1952 年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)は4月10日に第四号を発行。入手希望の方は、yutakanoguti@mail.goo.ne.jp  まで。進呈します。 サイト「野口 家 の ホーム ページ」
■上田信治 うえだ・しんじ 
1961 年生れ。「ハイクマシーン」「里」「豆の木」で俳句活動。ブログ「胃のかたち」

さいばら天気 さいばら・てんき1955年兵庫県生まれ。1997年「月天」句会で俳句を始める。1998~2007年「麦」在籍。現在「豆の木」会員。現代俳句協会会員。2003年「麦」新人 賞、05年、06年「豆の木賞」受賞。ブログ「俳句的日常」「七曜堂」 twitter

■山口優夢 やまぐち・ゆうむ
1985 年、東京生まれ。東京大学大学院博士課程1年。東大・早稲田など東京の学生俳句サークルやTHCなどの超結社句会に参加。第六回俳句甲子園団体優勝・個人 最優秀賞。第二回龍谷大学青春俳句大賞大学生部門最優秀賞。第四回鬼貫青春俳句大賞優秀賞。好きな惑星は火星。2008年12月より銀化所属。アンソロ ジー『新撰21』(2009)に参加。ブログ「そらはなないろ」

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