〔週俳11月の俳句を読む〕
さいばら天気血液のゆくえ
水売りの売る水の山天の川 久乃代糸
「水売り」は、辞書に「江戸時代、夏に、砂糖・白玉団子を入れた冷水を売り歩いた商売。また、その人。」とあるが、今では水そのものを売っているので、この句の「水の山」は、ペットボトルが山と積まれた状態を、どうしても思い浮かべる。水(ミネラルウォーター)専門の店などあるのかという声があがりそうだが、根津で見たことがある。
「天の川」を水に取り合わせた句は、めずらしくはないが、ちょっとした趣向として安定的には楽しめる。
夜、山なすペットボトルがいくぶん鈍い光を発している。それはもちろん星明かりの反射などではなく、蛍光灯の明かりである。それを齟齬と呼ぶこともできるが、俳句的には「天の川」くらいの嘘はついていいような気がする。
外套の中出てゆかぬ血液よ 同
外套から出てゆくどころか、からだからも出てゆくはずはない血液なのだが、こう詠まれてしまうと、外套と皮膚とが一体化してしまう。外套のなめらかな裏地に張り付くように、血管がめぐっているのだ。
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〔投句作品〕
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■矢野風狂子 兎は逃げた ≫読む
■俳句飯 つくりばな ≫読む
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2010-12-19
〔週俳11月の俳句を読む〕さいばら天気 血液のゆくえ
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