林田紀音夫全句集拾読 164
野口 裕
海鳴りを呼ぶ火が透けて砂の上
昭和五十一年、未発表句。セントエルモの火みたいな雰囲気もあるが、多分海辺のキャンプファイヤーだろう。「透けて」とあるから、それを遠くから眺めているところが想像される。この句は、昭和五十一年「俳句とエッセイ」十月号(牧羊社)に発表した十五句の最終句でもある。
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壺に薔薇そのあとに来る死を待つのみ
昭和五十一年、未発表句。「黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ」に典型的なように、間違ってはいないがちょっと大げさな物言いをしたときに、紀音夫の句は填る。下五の字余りというよりも、頭に響かせたときの印象からいうと音余りが、大げさな認識とうまく調和する。上掲句など、またかと思いながらも唸らざるを得ない。
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2011-05-15
林田紀音夫全句集拾読164 野口裕
Posted by wh at 0:05
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