愛の言葉
雪我狂流句集『恥はかくもの』の一句
西原天気
万歳は別れの言葉豊の秋 雪我狂流
なんともまあ牧歌的な!
戦時中に召集された若者を送り出すときの万歳三唱を映画などでよく見ます。これが原典になっているのか、田舎から一旗揚げに都会に出ていく若者を、列車の外から見送り、万歳をする。そんなシーンもありました。どの映画かは忘れたが、ちょっとじいんと来た。
万歳は基本的には喜びや祝いをあらわす。でも、ときとして「サヨナラ」の表現、それもやや牧歌的で純朴な表現となる。
掲句、「言葉」となっている。万歳ははたして言葉なのか? んんとですね、「ララは愛の言葉 La La Means I Love You」というポップ曲を思い出すなら、ここは「言葉」でいいのです。
サヨナラを万歳で、「愛している」を「ララ」で伝える。
とても良い伝え方だと思います。
で、このサヨナラにも愛がこもってると思うですよ。
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秋の句を集めた句集『恥はかくもの』はA6判・本文36頁。プリンター印刷をホチキスで留めた純然自家製本。雪我狂流さんは何年も前からこの方式で句集を自前で作っている(もう何冊目だろう?)。
立派な造本・美麗な装幀の句集に良い句がたくさん入っているとは限りません。自家製の簡素な句集だから句もみすぼらしいとは限りません。
ほかに何句か。
昼間から明かりを点けて秋風鈴
残暑とは皮のあまりし印度象
茎だけはこの世に残り彼岸花
ゆつくりとものの落ちたる秋の庭
倫敦も巴里も十月目玉焼
2012-09-30
愛の言葉 雪我狂流句集『恥はかくもの』の一句 西原天気
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