2012落選展
02 杉原祐之 居常
漁港二日や釣人がひとりゐる
年礼の人の革靴新しく
人日や競馬新聞眺め入る
桟橋の雪を湖へと掻き落す
天竜の口へ走れる御神渡
頬被りばかりに混める昼のバス
宿直の朝一番の雪掻ける
どんど火の灰や欅の梢へ飛び
おでん汁冷めて浮かべる油かな
大いなる富士へ向ひて蒲団干す
ラグビー部OB雪を掻きにけり
公魚を釣るや耳まで覆ひつつ
SLの車輪の際に犬ふぐり
釣堀の鴨のすつかり引きにけり
たかんなを掘るや軍手でジーパンで
花の朝日差眩しく冷えにけり
献血の列にも並び花の人
花冷の夜の食卓のキムチ鍋
出張に来てナイターのひとりかな
銅像の眉毛の下の燕の巣
爆心地跡の大きな楠若葉
早苗饗のお好み焼の厚さかな
五月雨の霧雨となり止みにけり
節電の文字炎昼に揺らぎたる
鬼灯をタンクトップが運び来る
水打つて工事現場の昼休
特急の通過の風に涼みけり
分団のポンプ置場も祭宿
何かもの落したくなる泉かな
川筋のバラックの灯に霧及ぶ
精霊を流し去りたる川の音
まだバスが一本通る盆踊
外周が出来ては崩れ盆踊
遠花火旅の終点近づきぬ
小児科の扉の秋冷を押しゐたる
柱状節理の裏より現るる月見船
野分風竹の足場を鳴らしたる
堂々と休日出社秋高し
昔より一坪空地昼の虫
救急車去りたる後の虫の闇
クルーザー浮ぶ隙間に鯊を釣る
焼畑の神に供ふる稗小豆
焼畑や土の熱さに蕎麦を播く
飴色に桜紅葉の照りにけり
短日のケーブルカーの混みにけり
シュレッダー溢るる御用納かな
特急の大きな窓に日向ぼこ
小波も立てずに鴨の陣変ふる
手袋を取りに戻りに坂登る
銭湯の番台に煮るおでんかな
●
2012-11-04
2012落選展 02 杉原祐之 居常 テキスト版
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4 comments:
水打つて工事現場の昼休 杉原祐之
さっと読んでこの句が引っかかりました。
気になりました。
なぜなんだろ、、、という理屈をこれから考えます。
しばらくお待ちください。2-3日かかるかも、、、
気になる句、感想、思い出した句、などを書きます
水打つて工事現場の昼休 杉原祐之
工事現場は、
家や道路といった完成品ではありません
足場が組まれたり、
人や機械で騒然とし、
刻々と変化していく風景です
とはいえ、
今は昼休みなので一旦停止状態
つまり、大げさに言えば、
二重に特別な、非日常な状態です
夜ではないから細部まで見えます
しかし、
真夏なので見る気も起こりません
取り敢えず、
丸ごと感じてやってください
そんなところでしょうか?
考えて見れば、
江戸の昔から工事現場はあったはずで、
先行句があるかもしれません
しかし、
するりと俳人の目を
逃れていたのかもしれません
早苗饗のお好み焼の厚さかな 杉原祐之
豊の秋では付き過ぎです
田植えが終って
田の神を送る「さなぶり」
豊作祈願、予祝、前祝いです
中の具がどうのこうのじゃありません
その分厚さが目出度いのです
まだバスが一本通る盆踊 杉原祐之
盆踊りの佳境をバスが通ります
バスが通り過ぎても踊りは続きます
いよいよこれからです
さてさて、
その後のバスはあるんでしょうか?
最終バスと言ってしまっては演出過剰?
おでん汁冷めて浮かべる油かな 杉原祐之
冷めてもうまいおでんですが、
「おでん汁」の汁がやや疑問
救急車去りたる後の虫の闇 杉原祐之
救急車は間に合った
付き添いも付けてやって、一安心
が、この後、どうするんだ
何かしなくちゃいけないんだが、
いったいどこから
どうすればいいんだ、、、
呆然と立ち尽す虫の闇
私自身、そんな経験があったので
身につまされました
出張に来てナイターのひとりかな 杉原祐之
ひとり=同僚といっしょではない、
を強調すべきでしょうか?
「見てゐたる」などでも、
一人の感じは充分あると思うんでが、、、
SLの車輪の際に犬ふぐり 杉原祐之
夏草に汽罐車の車輪来て止る 山口誓子
年礼の人の革靴新しく 杉原祐之
桟橋の雪を湖へと掻き落す 杉原祐之
以上
>ハードエッジ様
ご丁寧に御読み頂き、またコメントを下さりまして有難うございます。
季題を見て感じたことを余り小細工せずに読み下すスタイルですので、類句などは多々あると思います。
その類句の沼で悪戦苦闘しつつ何とか一句を得たいと思っています。
工事現場 は不思議と惹かれます。「工事現場」と硬い言葉が俳句に相応しいかどうか。
「おでん汁」は言葉も?ですし、上五で切れないほうが良いので,「おでん鍋の」にすべきでしたかね。
ナイターは色色推敲しましたが,ご提案の通りもっと削ぎ落としたほうが良かったかも知れません。
何れにせよ、ご丁寧な評有難うございました。
遠花火旅の終点近づきぬ 杉原祐之
近づいたら、
遠花火ではなくなるのではないか。
そう思って、取れませんでした。
が、
近づこうとしたが、
遂に遠花火のままで終った、
と読めばいいのでした。
一寸、せつない。
今思へば皆遠火事のごとくなり 能村登四郎
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