2012落選展
07 小早川忠義 旗日
春暁やパートタイマーこゑ甘く
レシートや要るも要らぬも卒業生
春愁や落下傘には皺の無く
こはごはと開かるるのみ春障子
花守やいらつしやいませこんにちは
はがせども葉の香の残り桜餅
介護士の分やふたつの桜餅
道中や白雪姫に母は似て
この店にシャッターの無く明易し
うららかや捨てねばならぬお弁当
花御堂かつて楽天地もありて
虚子の忌の常に灯りし店明かり
百千鳥より隠れ捨つ都市の塵芥
トーストの蜂蜜落ちて花疲れ
新入生おつりよこせと手を広げ
水の無きプールに溜まる春意かな
義士祭詰め込み過ぎの名刺入れ
春夕焼飛行機雲の滲み行き
植木市知らぬ同士が行列す
春の闇目の慣るるまで謝らず
朝寝して互ひに旗日生まれなり
蒲公英やライオンの檻小さくあり
親子連れ買ひ物籠にチューリップ
春の潮手旗信号いかに読む
落雲雀恩師は巨き雲の上
揚雲雀出会ひ頭に会釈され
卒業子詰襟のままパフェ食はせ
灰皿に栄螺の殻を捨て置きぬ
退職を思ひ止まり花山椒
母の日の贈りものにもノルマあり
メレンゲの口に溶け行き鳥帰る
雀の子やすめきをつけ前へ進め
桜草駅よりの客みな抱へ
岩海苔と青海苔の差を説き伏せぬ
案内することば殖え行き古茶新茶
磯遊び炒飯の粒紙皿に
割り箸とストローをつけ氷売る
ガム一個袋に入れて朝暑し
はつなつやフライドポテトかりと噛み
半ズボン姿のをとこ立ち読みす
脳天にむかふ痛みやかき氷
岩清水込められし瓶転がりぬ
ひとりでに氷の鳴れり紙コップ
雲の峰間違ひを知らず行き過ぎぬ
汗の飯二昼夜勤め切つたれば
抱きやればすり抜けらむや竹夫人
午前九時釣り銭皿に虹掛かり
流し来ぬいらつしゃいませこんばんは
箱庭と紛ふ店なりけふも立つ
炎昼や手提げ袋に葱はみ出で
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2012-11-04
2012落選展 07 小早川忠義 旗日 テキスト版
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花御堂かつて楽天地もありて 小早川忠義
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