2012落選展
13 村越 敦 駱駝の列
やがて降る雨雪のこと薬喰
絵の中の夜明のいろと寒暁と
木枯やくちびる荒れて街荒れて
海に雪ぶつかり合うてしづかなる
女正月話を聞いて暮れにけり
屏風絵の中や音なく笑ふなり
飛んでシーツは青くはためく枯野かな
コンテナの陸揚げしづか雪催
寒泳や紙縒りのやうな男たち
梨咲いてましろくひかる鏡かな
春はあけぼのこのマカロンの膨らみよ
西葛西葛西浦安鳥雲に
アネモネや作り物めく博士の手
青麦の向かうの人の消えさうな
春満月山崎パンは半額に
つばくろや愛の印として傷は
蔦若葉真面目な人のごとくあり
花は葉に洗ひざらしの犬と靴
世界ぢゆうの蟻の話をして眠る
明易やガラムマサラをひとつかみ
薄暑かな道の向かうに西友見え
入梅や芋羊羹が皿の上
朝曇バスが着いては人うごき
広告の中の家族やシクラメン
梅雨冷や小学校は朱き海
室内プールの水面ゆらめく窓枠も
水無月の火口に石を売る男
顔長き人や茄子をいつくしみ
夢にまで見し駱駝の列や橋は夏
哲学が愛より大事天道虫
ゆふがほやはたらいた日はよく眠る
電話ボックスいつもからつぽ柳散る
しばしある日向おそろし台風裡
朝霧やワインボトルが道端に
死のかるく描かれてゐる檸檬かな
黄落や捨てし水槽わづかに濡れ
戦闘機飛ばぬ空ある稲田かな
葡萄酒の樽に木の実の落ちにけり
ソヴィエトは立派鶏頭枯れはじむ
色褪せて晩秋の空それとして
小春日の飄々として絵描きかな
ハロウィンや空気つめたく灯はあつく
梟や見知らぬ街はかがやける
欲なべて簡単に満ち冬籠
雪の近江は夜明に音のなく淋し
日向ぼこ遠くの日向思ひけり
枯蓮やおでこ明るく会議室
クリスマス・ソングに街の伸びちぢみ
音楽に息・熱・指や夜半の冬
けふがいちばん幸せといふ雪が降る
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2012-11-04
2012落選展 13 村越 敦 駱駝の列 テキスト版
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コンテナの陸揚げしづか雪催 村越 敦
日向ぼこ遠くの日向思ひけり 村越 敦
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