後記 ● 上田信治
外山一機さんの句集は、pdfファイルのかたちで発表されたものに、表紙からリンクを貼らせてもらいました。
本来なら、記事のかたちでご紹介すべきところですが、ウェブマガジンに句集が「ぶっささってる」というのも、斬新かな、と思いまして。
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外山さんといえば、アンソロジー『新撰21』(2010)の
シルゝ紀を来て雨具屋のうすみどり
梨を落とすよ見たいなら見てもいゝけど
などの句がすぐ思い浮かびます。今回のpdf句集は、それ以後の作品。
今回収録されなかった「Ooi Ocha(父俳句編)―お~いお茶を詠む/お~いお茶で詠む―」(『俳句』2011年3月号)
運動会ビリでもわが家の一等賞
父さんが帰ってくるまで起きてていい?
が、現代アートに範をとった試行の行き着くところであるとしたら。
句集『平成』には、ちょうどその「折り返し地点」の「前後」に当たるような作品が収録されています。
「Ooi Ocha」は、悪しきポストモダンの典型のように見えるのですが、この地点にいたるまで、この人が、どれだけ怒って、どれだけ絶望したのか。そのことに思いをはせて、冷やっとしてみることは、意味のないことではない。そういう作品です。
「上毛かるたのうた」は、小誌10句競作への応募作品に、天気さんが、かるたが「あ」から全部そろったら掲載させていただきたいと反応したところ、じつはもうできていた、というもの。
「ほんとうに正直な気持ちで俳句を作ったのは久しぶりのことでした。僕の底にあって僕がどうしても捨てられなかったものは、僕の一番毛嫌いしていたはずのものであったようです」(句集『平成』あとがきより)
前号と今号掲載の鑑賞記事「4月の俳句を読む」でも、とても反響が多かった。
「巻民代追悼句集『御遊戯』」というのも、外山さん。日録的前書もねつぞうしつつ、女性らしき作中主体を仮構して書くという作品です。
時刻:09/21/2011
家を出ると虹が出ていた。Mが虹がでているねって言ったけど、本当は注意散漫なMに指摘されるまでもないの。Mをスーパーにおいてひとりで帰ってたらご近所の三叉路はもう夕暮れになってる
三叉路でしずかにうんこしていたの
あはははは。なにこれw
この少しのややこしさが、自分には面白く感じられました。
ポストモダニズムにも、手間とかセンスとか複雑性は必要だよなあ、という。
あ、けっきょく紹介記事を書いてしまっていますが。
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ではまた、次の日曜日にお会いしましょう。
no.317/2013-5-19 profile
■金中かりん かねなか・かりん
1927年生まれ。句作は60歳頃よりはじめる。辻桃子主宰「童子」、西野文代主宰「文」を経て、山口昭男主宰「秋草」入会。現在に至る。2013年4月、句集『榠樝』。
■対中いずみ たいなか・いずみ
1956年大阪市生まれ。2000年「ゆう」入会、田中裕明に師事。2005年第20回俳句研究賞受賞。「静かな場所」代表・「椋」同人。句集『冬菫』『巣箱』。
■外山一樹 とやま・かずき
1983年10月生まれ。2000年から2年間、上毛新聞の「上毛ジュニア俳壇」(鈴木伸一、林桂共選)に投句。2004年から同人誌『鬣TATEGAMI』(発行人林桂、編集人水野真由美)に所属。ブログ(Haiku New Generation)
■太田うさぎ おおた・うさぎ
1963年東京生まれ。「豆の木」「雷魚」会員。現代俳句協会会員。共著に『俳コレ』(2011年、邑書林)。
■小池康生 こいけ・やすお1956年、大阪市生まれ。「銀化」同人副会長。俳人協会会員。2012年4月、句集『旧の渚』上梓。
■山下彩乃 やました・あやの
1988年生まれ。山形県出身。現在東京在住。2009年より作句開始。2010「梓」参加。打楽器ずき。
■野口 裕 のぐち・ゆたか
1952年兵庫県尼崎市生まれ。1952年兵庫県尼崎市生まれ。二人誌「五七五定型」(小池正博・野口裕)完結しました。最終号は品切れですが、第一号から第四号までは残部あります。希望の方は、yutakanoguti@mail.goo.ne.jp まで。進呈します。サイト「野口家のホーム ページ」
■小川春休 おがわ・しゅんきゅう
1976年、広島生まれ。現在「童子」同人、「澤」会員。句集『銀の泡』。サイト「ハルヤスミ web site」
■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。共著『超新撰21』(2010)『虚子に学ぶ俳句365日』(2011)共編『俳コレ』(2012)ほか。
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2013-05-19
後記+プロフィール 317
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