創刊6周年記念誌上句会
【全】選句と作者・一覧
ああ藤の全貌が吹かれている 六番町
○小市○山田露結○村田篠○M-s
■表現が大胆。「全貌」が巧みだと思う。(M-s)
■「藤の全貌」でいただきました。(村田篠)
■シンクロナイズドスイミングのようにすべての房が同時に揺れる様を的確に描いている。(小市)
■「全貌」というとらえ方が面白いが、使い回しが出来そうなフレーズでもある(山田露結)
ウルトラマン大全目刺かじりかけ 藤幹子
○今村豊
■取り合わせの妙。(今村豊)
またひとつ全きくらげながれゆく ハードエッジ
○山田露結○石井薔子○独楽
■水族館でしょうか。静かに漂う様が絵になっています。(独楽)
■「またひとつ」が惜しい気がする(山田露結)
遠くまで全集のなき日本地図 KIYOAKI FILM
腰椎の全からざる花の後 石井薔子
春光や全校生のメイポール 栗山心
春愁の全行程を終了す 近恵
○六番町○中村遥
■ある時ふと始まって、ある時あるきっかけでふっと去っていくもの、それが春愁。でもそれぞれに序破急なる工程があると言うのが面白い。終了した安堵が伝わる。(中村遥)
■ 起承転結あるごとし。ぼんやり感の強い季語に抵抗しているようでおかしい。(六番町)
真夏の夜の夢ムーンウォークは全力で 石原明
神学の全貌を湯豆腐に見き 中山泡
○小市
■悟りの境地というべきか。キリスト教を想起させる「神学」に対して禅を想起させる「湯豆腐」を置いたのも楽しい。(小市)
神学大全時計の針が丸っこい 野口裕
○M-s
■神は細部に宿るとか。針の先端部にも。(M-s)
全コース膝落としたるプールかな 山田露結
○豊永裕美○柏柳明子○ハードエッジ○KIYOAKI FILM
■負けたのでしょう。がっかりはプールになると、非常に倍増。(KIYOAKI FILM)
■無意識に「肩を落とす」と読み替えていたためか、飛び込む直前、というのが直ぐには判りませんでした。ラジオの実況中継でも、そういう言い方をするのか、しないのか、、、、微妙な脱力感。(ハードエッジ)
■「膝落としたる」から、飛びこむ前の緊張感あふれる景がよく見える。(柏柳明子)
■スタートの一瞬を捉えている。(豊永裕美)
全教室の映るモニター若葉冷 今村豊
○豊永裕美○忠義○石井薔子○柏柳明子○小松三々○栗山心
■きっと現代の学校は、このように管理されているのでしょう。ひんやりとした感じが、少し「Jホラー」めいています。(栗山心)
■現代の学校の、およそ学校らしからぬ光景。モニターに映る画像に、なにか冷やかなものを感じる心。季語が効いています。(小松三々)
■何気ないようで、複数の画面を見つめる視線の沈黙に奇妙な怖さが。若葉冷がよい。(柏柳明子)
■モニターに映るのは銃乱射犯?なんてことを考えてしまう。(石井薔子)
■監視されているような雰囲気と季語の取り合わせが良い。無機質な感じ。(豊永裕美)
■そのモニターには生徒たちはひとりも映っていないような、試写の風景に見える。(忠義)
全校で生徒は五人しやぼん玉 独楽
○野口裕○遊起○透水
■ゆったりとした5人の学び舎、しゃぼん玉のように自由に自然を学ぶ姿は7色に光る。(遊起)
■一年生は小さく、沢山。六年生は大きくひとつ。健康優良児ぞろいでしょう。(野口裕)
全国のみゆき通りに風薫る 村田篠
○忠義○藤幹子○中山泡○近恵
■「みゆき通り」がやけにさわやか。「○○銀座」じゃないのがよかった(近恵)
■「みゆき通り」が良いですね。(中山泡)
■あまねく春。みゆき通りという、ふた昔前ぐらいの情緒のありそうな通りが絶妙。(藤幹子)
■例えそこにみゆき族はいなくともイメージは消えない。(忠義)
全焼の市民会館秋の暮れ M-s
全身のバネ一丸にボート漕ぐ 透水
○六番町○独楽
■スピード感と力強さのある写生。良いと思います。(独楽)
■ ボートがひとつの大きなバネに思えてきました。(六番町)
全身の透けるまで瀧仰ぎけり 中村遥
○豊永裕美○遊起○透水○fuchi○村田篠○今村豊○ハードエッジ
■清々しいです(ハードエッジ)
■涼しげ。(今村豊)
■そんな感じがあります。言い得て妙だなあ、と思います。(村田篠)
■滝を見続けるといろいろの自分になるんですね。全身が透けてくる人や、滝の一滴になって落ちる人や。(fuchi)
■瀧をいつまでも眺めていると心まで透き通ってこころ洗われる。(遊起)
■瀧にはこのような一途にさせる力がある。(豊永裕美)
全店の灯りが消えて草萌ゆる 豊永裕美
○山田露結○中山泡
■いのちの感触があります。(中山泡)
■夢は夜ひらく(山田露結)
全裸磔刑つまさきに火口触れ バンの
○野口裕○今村豊○M-s
■これも写実的方法ということになるのか。細部の真が全体の虚を支えているというか。(M-s)
■何か分からぬが強烈。(今村豊)
■恐ろしい光景に対する微細なる想像力。(野口裕)
着衣のごと見ゆる男は全裸かな fuchi
藤房に全能の神下りてきし 遊起
○中村遥○青葉有
■藤の花の全開の神々しい感じが全能の神として、うまく表現されている(青葉有)
■先日瀬戸内の「しまなみ街道」を旅し、その中の大三島で300mも続く真っ盛りの藤棚を見た。前方が霞むほど遠くまで続く藤の花が風に揺れる様はまさに全能の神が下りて来るイメージ。(中村遥)
入梅や二組全員次々後転 小松三々
○石井薔子○M-s○KIYOAKI FILM
■転げまわる、姿に共感。(KIYOAKI FILM)
■素直で面白い一句。体操の時間の情景が浮かぶ。(M-s)
麦秋や全て通じし自動車道 忠義
八十八夜全権は妻にあり 柏柳明子
○六番町○独楽
■恐妻家はまた愛妻家でもあります。(独楽)
■ 上五に何が来ても揺るぎない中七下五である。が、上五のこの数字は季語から離れて「たくさん」を表し、絶妙であるとも思う。(六番町)
万緑や恐い夢は全くみない 青葉有
○中山泡
■万緑が恐ろしくて良いです。(中山泡)
麗らかや西部講堂全闘委 小市
○石原明○fuchi
■「贅六が……」→「聖五月……」に続く三句目。京大西部講堂での学生集会、季節がちょっと戻りますが、翌年以後と解釈。つらかったこと、必死であったこと、だけど「麗らか」を感じる時間もあった。なぜって、とにかく青春の真っただ中だったのだから。「麗らか」でかえって胸がじんとなる。(fuchi)
■西部講堂とあるからには1960年代後半の大学闘争時の京大全闘委であろう。季語に「麗らかや」か。こういうノスタルジックな句はどうなのかしらとは思うのだが。。。同世代として取らざるをえないか。(石原明)
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2013-05-12
創刊6周年記念誌上句会 【全】選句と作者・一覧
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2 comments:
ああ藤の全貌が吹かれている 六番町
五五六だし
ゐる、ではなく、いる、だし
で、取りませんでした。ご容赦。
面で咲いて人の頭上に被さってくる藤、藤棚。
ああ、はその大きさへの挨拶と見ます。
それに対して、
全貌=ぜんぼう(ぜんばう)は
もっとぼわっとした立体的な感じがするんですが
いかがでしょう?
全貌ならむしろ、
枝垂桜その全貌の吹かれをる、とか
以下、ああ、参考句。
ああ今日が百日草の一日目 櫂未知子
百日の長さへの詠嘆=ああ
乳いろの水母流るるああああと 吉田汀史
全国のみゆき通りに風薫る 村田篠
風薫る、はかなり強い季語と思います。
はたして、
みゆき通り、で受け止められるかどうか、、、
全国に銀座ありけり風薫る、では
あんまりだと思うかもしれませんが、
私ならやはり銀座で押し通したいです。
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