自由律俳句を読む 5
桜
馬場古戸暢
桜
馬場古戸暢
無伴奏にして満開の桜だ 岡田幸生
句集『無伴奏』(そうぶん社出版、1996)収録。句集題名のもととなった句である。無伴奏とは、音楽に疎い私には聞きなれない言葉だが、十分句意は伝わる。満開の一本の桜が、どおんと気高くそびえている。
散るから桜 そねだゆ
確かに、散ることがなければ、桜もここまでちやほやされなかっただろう。七音という短律の句となったが、これ以上の言葉は必要あるまい。なお、同じ七音でよく知られた句として、橋本夢道の「うごけば、寒い」がある。
蜘蛛の巣に桜一片 矢野錆助
桜の根元に巣をはっていたのだろうか。贅沢な蜘蛛である。この句にぐっと凝縮された作者の思いは、読者各々の中で開放されることだろう。それぞれの心に、春らしい景を浮かび上がらせるのである。
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