林田紀音夫全句集拾読 277
野口 裕
水引の金銀明日へひかり帯び
水引の紅白誰の手に渡る
菊挿してその後の夜は雨の音
コスモスの夕空翅をひろげて今日
平成三年、未発表句。「亜紀結納」の詞書以下、連続した四句と受け取れる。未発表句だけに日記代わりの面がある。晴れの句に滲む安堵感。これ以上言うことはないだろう。
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吹奏楽にわかに落葉舞いあがり
平成三年、未発表句。マーチングバンドだろうか。行進が進むにつれて路上の枯葉が舞いあがって行くと見れば分かりやすい光景になる。これまでなら吹奏楽を軍楽隊などとし、蹂躙される落葉に戦争体験を重ねるというような作り方になっただろうが、意味を込める書き方に疲れている面がこの時期にはありそうだ。この句に先行する、「木犀に眼を遣る雨のひとしきり」などとあわせて読むとそうした一面が浮上してくる。
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水底のくらやみに似て柿熟れる
平成三年、未発表句。黒ずんでゆく柿に水底を見る。死の世界を想像しているか。「似て」は、発表句に見かけない表現。推敲の途上を示しているが、あっさりと対比させた方が見えてくるものもある。
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2013-08-04
林田紀音夫全句集拾読 277 野口裕
Posted by wh at 0:02
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