【週俳7月の俳句を読む】
既成の美学とは無関係に
きゅういち
俳句での読みがどういう方向へ向かってなされるか、ということがよくわからない。川柳では、とりあえず句の「意味」を読み取ろうとするが、大方の川柳人、とくに伝統系と呼ばれる人々にとって句群は「難解」と映るだろう。シュールな句が並ぶ。
百本の薔薇絞め殺す仕事くる ぺぺ女(以下同)
「百本の薔薇」が「絞め殺す仕事」の報酬なのか「薔薇」が仕事を依頼する合図なのか、フランス映画の一場面のようだ。
シャツ派手である夕立のスラム街
こちらはブロードウェイ風、「シャツ」が派手とあり、「夕立」との対比が鮮明な印象を与えている。
ダリアかきわけかきわけ余命延びるんだって
「かきわけかきわけ」の力強さと「ダリア」の取り合わせ、「ダリア」が一面に咲いているイメージを「余命…」に落とす、諧謔が効いている。
睡蓮や姉妹そろって窃視症
「窃視症」盗み見るということか、しかも「姉妹そろって」である。「睡蓮」は夜には花を閉じるという、その神秘的な意味合いとあいまって、軽いエロスが漂う。
金雀枝に溺れる骨の白さかな
毒ガスの検知に使われる「金雀枝」と「骨の白さ」の距離がやや近いような気もするが、「溺れる」のはぐらかしが成功させている。
鍵盤を外せば青葡萄びっしり
一番いいなと思う。捨てられたピアノなのか、屋敷から逃げ出したのかもしれない、解体され、中は「青葡萄」がぎっしりという。なんてシュールだ。フロイトやユングに分析させてみたいような画がみえる。
全体的に深層意識から引き出した不合理を、既成の美学とは無関係に言葉として組み立てていくセンスがすばらしいと同時に自由だと感じた。
■マイマイ ハッピーアイスクリーム 10句 ≫読む
第325号 2013年7月14日
■小野富美子 亜流 10句 ≫読む
■岸本尚毅 ちよび髭 10句 ≫読む
第326号 2013年7月21日
■藤 幹子 やまをり線 10句 ≫読む
■ぺぺ女 遠 泳 11句 ≫読む
第327号2013年7月28日
■鳥居真里子 玉虫色 10句 ≫読む
■ことり わが舟 10句 ≫読む
1 comments:
金雀枝=エニシダ
金糸雀=カナリア
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