自由律俳句を読む 17
中塚一碧楼 〔1〕
馬場古戸暢
中塚一碧桜(なかつかいっぺきろう、1887-1946)は、河東碧梧桐に師事し、碧梧桐より「半ば自覚せぬ天才の煥発である」と評された。碧梧桐による添削に反発し、碧門下を離れていた時期もあったが、後に和解する。碧梧桐より譲られて主宰をつとめた『海紅』は、現代まで続く自由律俳誌である。
死期明らかなり山茶花の咲き誇る 中塚一碧楼
碧梧桐によって高く評価されたとされる句。他人の死期か大切な人の死期かわからないが、そんなこととは関係なく、山茶花は咲き誇る。
山一つ山二つ三つ夏空 同
比較的、よく知られている句だと思う。小さな山々に囲まれたまちでの景だろう。二つ目の「山」を抜いたらどうなるかと考えたが、そうすると山の数が減ってしまう気がした。
橋をよろこんで渡つてしまふ秋の日 同
橋を渡ることそのものが嬉しいことだったのか、よろこばしいことがあった時に橋を渡ったのか。どちらにせよ、この秋の日がよほどいい日だったことが伝わってくる。
青い木が立つて牛が腹がだぷんだぷん 同
「だぷんだぷん」の揺蕩う感じがなんともいえない。牛が自身の生活の中に生きていたからこそ、詠める句のように思う。
春の夕霞立つ二つの橋を二つ渡った 同
「二つの橋を二つ渡った」ということは、夕霞の中、二本の川を渡って行ったということ。別の世界へ行ってしまいそうな行路となった。当時の一碧楼は、中洲の側で暮らしていたのだろうか。
2013-10-27
自由律俳句を読む 17 中塚一碧楼 〔1〕 馬場古戸暢
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