〔今週号の表紙〕
第337号 顔
山岸由佳
会社帰りにある写真家の写真展に立ち寄った。
一枚の写真の前に足が止まる。
工事現場で働いている50代ぐらいの男性が5、6人、仕事の休憩中にカメラに向かって微笑んでいるだけの写真だった。陽の下で働いた後の程良い疲れと、仲間とのささやかなほっとした時間が滲んでいるように思われた。もしかしたら、次の瞬間には、全く違う表情に変わっていたのかもしれないが、写真家が切り取ったものは、どの人も欲がなさそうな穏やかな表情であった。
その穏やかさに、かすかな淋しさを感じない訳でもなかったが、写真展の中では比較的地味であったその写真に、ふっと足が止まったのは、その時の私に足りていないものが写っている気がして、ほんの少し羨ましかったのかもしれない。
20年後、あなたは、私は、どんな顔をしていますか。
●
週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら
0 comments:
コメントを投稿