2013-11-10

自由律俳句を読む 18 中塚一碧楼 〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 18
中塚一碧楼 〔2〕

馬場古戸暢


前回に引き続き、中塚一碧楼句の鑑賞を行う。

赤ん坊髪生えてうまれ来しぞ夜明け  中塚一碧楼

余談だが、もうすぐ一歳になる私の姪には髪の毛がいまだほとんどない。「うまれ来しぞ」に喜びが、「夜明け」にこの子の明るい未来が、それぞれあらわされているかのようだ。

夏めくこころあり水平なれば家郷のごとし  同

ここでの「水平」とは、自身の「夏めくこころ」が穏やかにあることを意味するのだろうか。心の持ちよう次第で、どこでも「住めば故郷」となるのだろう。

夫人よ炎天の坂下でどぎまぎしてよろしい  同

この夫人は一碧楼をみてどぎまぎとしていたのか、それとも別の何かが原因だろうか。とにもかくにも、「よろしい」という一碧楼の主観が、たまらなくよいと思う。

まじめに犬のからだを見てうららかな  同

時にはまじめにじっくりと、犬のからだを観察したくなる時もあるのだろう(どういう時か知らないが)。前回に紹介した牛の句に通じるような、春のある日ののんびりとしたひとこま。

病めば布団のそと冬海の青きを覚え  同

海の近くで療養していたのだろうか。ここでいう「冬海の青き」は、実際に海を眺めたわけではなく、一碧楼の想像の産物のように思える。病んでいるからこそ、こうした景を覚えたのではないか。

2 comments:

四ッ谷 龍 さんのコメント...

馬場古戸暢 様

自由律俳句の鑑賞、深く関心をもって拝見しています。
今回鑑賞されている中塚一碧楼の

 赤ん坊髭生えてうまれ来しぞ夜明け

ですが、「髭生えて」ではなく「髪生えて」が正しいのではないでしょうか。

 赤ん坊髪生えてうまれ来しぞ夜明け

この句は、「海紅」大正11年3月号に掲載された句です。尾崎騾子氏の『中塚一碧楼研究』に引用されており、私も初出で確認したことがあります。
一句としても、「髭生えて」では理屈っぽく面白がりすぎる感じで、「髪生えて」の透明な詩情には及ばないのではないでしょうか。

馬場古戸暢 さんのコメント...

四ツ谷龍さま

ご指摘をどうもありがとうございます。

手持ちの資料を確認しましたところ、確かに「髪」となっておりました。私が打つ時に誤り、鑑賞文を書くときにも気付かなかったようです。

ここにお詫びして訂正いたします。

今後は、同じ過ちを繰り返さないよう、注意を払って作業を行います。

また他にも誤りなどありましたらば、ご指摘いただければ幸いです。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。