2013-11-17

自由律俳句を読む 19 北田傀子 〔1〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 19
北田傀子 〔1〕

馬場古戸暢


北田傀子(きただかいじ、1923-)は、随句(自由律俳句)結社『草原』の主宰である。かつては千秋子の俳号で、『層雲』の主力作家として活躍していた。『層雲』を脱退し、『草原』を立ち上げて後は、文学としての自由律俳句を「随句」と呼ぶことを提唱し、その主張を『随句の基調』(随句社、2006年)としてまとめている。以下、第一句集『傀子集』(随句社、2011年)より数句。

思わぬ金が入って口笛の人といる  北田傀子

思わぬ金を手に入れたのが作者ととるか口笛の人ととるかで、句意が大分変わってくる。この二人の次の会話は、いったいどのようなものとなるのだろうか。

吸ったことのある唇の発言をメモする  同

思えば「唇を吸う」とは、なんと直接的で艶やかな表現だろうか。掲句では、この唇と作者との関係性が非常に気になる。

あなたも黙ってみぞれを歩いた  同

みぞれが降る中で流れて行くふたりの静かな時間を、読み手側も共有できる。

添寝の銀髪のよく眠っている  同

奥さんとの景だろう。「銀髪」に時の流れを感じるが、今なお添寝をできるところに、変わらない想いを見る。

両方の女に話して蛍への道  同

女二人を両手にはべらかして、蛍狩りにやって来たのだろう。なんたる贅沢。しかし均等に扱わなければまずいのだろうか、二人の女に交互に話しかけながら歩いている様子が浮かぶ。


※掲句は北田傀子『傀子集』(2011年/随句社)より。

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